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真田十勇士
巻ノ百四十七 吉報その十一

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 本多は一呼吸置いてからだった、秀忠に答えた。
「それがしもそろそろ」
「そうか、ではな」
「はい、あと少しいさせてもらいますので」
「それまで宜しくな」
「それでは」
「余はこれからより天下の政に励む」
 秀忠は確かな声で約束した。
「戦が終わったからにはな」 
「泰平になりました、それでは」
「次はその泰平をしかと守る政をすること」
「だからな」
「上様は政にお励み下さい」
「そうする、父上はまだ戦われるが」
「上様はです」
「戦がない様な天下を作る政をしようぞ」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 秀忠は戦のことも知りつつだった、そのうえで。
 政を行うことにした、彼は己のやるべきことをしていくのだった。江戸において。
 幸村はその江戸には向かわず共に戦う者達と共に真田の忍道を通り駿府に向かっていた。その駿府に向かう途中で。
 幸村は夜の月を見て言った。
「よい月じゃな」
「はい、実に」
「見事な満月です」
「黄色く光っていて」
「実によい月ですな」
「全くじゃ」
 こう言うのだった。
「それはな」
「はい、しかし」
「しかしですな」
「この月もですな」
「戦が終わったその時二ですな」
「見られるかどうか」
「そうするんですな」
「問題は」
「それですな」
「そうじゃ、戦うが」
 しかしと言うのだった。
「そこで死ねばな」
「月も見られませぬな」
「あの月も」
「そうなってしまいますな」
「左様、このよい月も生きてこそ見られる。しかしまだ見られるか」
 それはというと。
「戦次第じゃ。あの世で見る月は別の月じゃ」
「全くですな」
「それはまた別の月ですな」
「死んで見る月は」
「そうした月ですな」
「そうじゃ、だからここはな」
 まさにと言う幸村だった。
「勝ってな」
「そうしてですな」
「この月を見ましょうぞ」
「薩摩に戻り」
「是非な」
 こう十勇士達に言うのだった。
「そうしていこう、それでは今宵はな」
「はい、寝てですな」
「明日日の出と共にですな」
「また出発しましょう」
「そうして進んでいきましょう」
「そうしようぞ、駿府まですぐだ」
 真田の忍道を使えばというのだ。
「急ぐことはない」
「ですな、どの方も健脚ですし」
「駿府までは近いですな」
「では焦らずに駿府に向かい」
「駿府に着けば」
「それからは」
「戦をしようぞ」
 幸村は満月を眺めつつ十勇士達に応えた、そうしてだった。
 今は共に駿府に向かう者達と共に寝た、そうして英気も養っていた。


巻ノ百四十七   完


                2018・3・15
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