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真田十勇士
巻ノ百四十七 吉報その七

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「飲みましょうぞ」
「二日酔いになるまでですか」
「何、この薩摩は温泉も多いので」
「それで二日酔いになれば」
「朝からそこに入り」
「二日酔いをですな」
「消せばいいだけです」
 その時はというのだ。
「ですからもう」
「勝ったなら」
「はい、飽きるまで飲みましょう」
「その時のこと、楽しみにしております」
 幸村は治房に笑って応えた。
「是非」
「それでは」
「勝って帰ってきます」
「お待ちしていますぞ」
 治房も笑って応えた、そしてだった。
 一行は薩摩を発った、そうして真田の忍道を使って駿府に向かうのだった。その駿府では。
 家康が家臣達にだ、こんなことを言っていた。
「どうも近頃身体がな」
「大御所様、そうしたことはです」
「言われぬことです」
「言葉は形になりまする」
 幕臣達は言霊という言葉から家康を諫めた。
「むしろここはです」
「百まで生きようと思われることですぞ」
「病も気からと申しますし」
「まだまだこれからではありませぬか」
「幕府にしましても」
「ははは、もう戦の世ではなくじゃ」
 家康は自分のやることがあるという言葉に笑って返した。
「幕府も江戸で土台固めに入っておる、後は竹千代達がやってくれる」
「だからと言われますか」
「それで、ですか」
「もう大御所様はですか」
「これでと言われますか」
「その様に」
「天命を終えたのであろう」
 こう言うのだった、それも穏やかな顔で。
「やるべきことは果たした、しかも古稀も越えた」
「七十のそのお歳を」
「だからですか」
「もうこれでよい」
「そう言われますか」
「そうじゃ、諸法度も出しておるしのう」
 天下の法を定めたこともしたというのだ。
「もう後は幕府もな」
「足場を固める」
「江戸において上様がされる」
「だからですか」
「大御所様は」
「日光の用意も進めておる」
 江戸から見て北東即ち鬼門の方の霊的な護りもというのだ。
「わしはあそこに祀られる、そしてな」
「江戸を護られますか」
「それからは」
「幕府も」
「そうされますか」
「そうする、それがわしの最期の働くことじゃ」
 それになるというのだ。
「ではな」
「ですか、人は必ず死ぬ」
「だからですか」
「大御所様もですか」
「その様に言われますか」
「そうじゃ、この世にあるもので終わらぬものはなくじゃ」
 家康はこの時はまるで悟った様な顔で述べた。
「そしてじゃ、人もじゃ」
「死ぬ」
「誰であろうと」
「この世で不滅の者はない」
「だからですか」
「わしは近いうちにこの世を去る」
 そうなるともいうのだ。
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