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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 5
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則正しく不健康な生活って、微妙に器用な気がする。
 こんな無睡眠生活を続けてて、大丈夫なのかしら?
 「ああでも。これが習慣になっているのなら、お世話になってばかりな私達にも、ちょっとだけ恩返しができるかも知れないわ」
 「え?」
 「ふふ。お手柄よ、リースリンデ」
 「?? はあ」
 また、聖天女様の指先で頭を優しく撫でられた。
 なんだかよく分からないけど、聖天女様に褒められたから……まぁ、良いか。

 
 翌日。


 「今日もありがたいお説教を聴かせていただき、ありがとうございました」
 「此方こそ。お忙しい時分に耳を傾けていただき、ありがとうございました」
 「神父様のお言葉を聴けただけで、今日も一日頑張ろうと気合が入りますわ」
 「光栄です。貴女にとって素晴らしい一日となりますよう、微力ながら祈らせていただきます」
 信徒達の声が飛び交う賑やかな礼拝堂。
 二回目のお説教を終えたばかりのアーレストを逃がすまいと素早く取り囲んだ女性達が、皆一様に普段より高い声で彼に話しかける。
 「今日は特に、声の張りがよろしかった気がします」
 「あら。貴女もそう感じたの? 私も、いつもとは違うなって感じてたのよぅ。あ! 勿論、いつもの神父様も素敵なお声でいらっしゃるのだけどね!?」
 「声だけじゃないわ! ほら、よくご覧になって! 今日の神父様のお肌、いつもの倍はつるっとしてて艶々よ! まるで光り輝く玉石のよう。それでいて柔らかそうで……とても羨ましいですわ!」
 「まぁ、本当ね。染み一つ無く、きめ細やかで。なんて美しいのかしら」
 赤らんだ両頬に手のひらを当てた女性達が、一斉に「ほうっ……」と感歎の息を吐く中。アーレストは今まで誰にも見せた事が無いような、心底嬉しそうな満面の笑みを披露しながら答えた。
 「実は今日、「とても静かで穏やかな」「落ち着いた環境で」深い眠りに就けたのです。目が覚めた時も、不思議と「生きた花の香りに包まれているような」心地でした。そのお陰で、心身共にかつてない程好調でして。こうして皆様にお褒めの言葉を掛けていただけるのも、心優しき女神とその使徒の温情を(たまわ)ったからであると確信しております」
 彼の言う女神と使徒が「自分に気付かれないよう密かに何らかの行動をしてくれた」アリアの生母と精霊を指している事など、当然気付く筈も無く。
 欲に穢れた目を潰さんばかりの清浄なる後光が射して見える麗しい神父の笑顔に、女性達は

 (((アリア様、ありがとうございます! ご馳走様ですーっっ!!)))

 握り拳を作り、心の中で主神へ向けて、それはそれは力強く感謝の念を叫んだ。
 

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