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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 5
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(さと)いから」

 寝室にはベッドが二台あるんだけど。
 女性達と同じ部屋で眠るわけにはいかないからって、アーさんは一人分の枕と掛け布団を執務室へ持ち込んで、聖天女様とは寝場所を分けてる。
 ここ、べゼドラにも見習ってほしい紳士ぶりだわ。

「違うんです」
「え?」
「眠ってなかったんです」
「眠ってなかった?」
「はい。バッチリ起きて、しかも執務に励んでました」

 さすがにこんな時間ならまだ起きてないだろう、って頃合いを見計らって侵入した瞬間、眠ってると思ってた相手と目が合った挙句
「こんな時間にどうなさいましたか?」
 なんて、平然と尋かれたのよ?
 あの時ばかりは、驚きすぎて悲鳴を上げそうになったわ。
 聖天女様を起こすといけないから、なんとか堪えたけど。

「深夜って、何時頃?」
「二時です」
「むしろ早朝よね、それは??」
「それだけじゃありません。そこから一週間前まで、ちょこっとずつ時間をずらしながら深夜と早朝の侵入をくり返してみたんです。結論から言って、アーさんは毎日、夜な夜な執務をしていて、まったく寝てませんでした」
「いつも?? 私達と就寝の挨拶を交わしてから、起床の挨拶を交わすまで、まったくの睡眠無し??」
「はい。私が見てきた限りですが。何時に覗いてみても、眠そうにしている様子すらありませんでした」
「ありえない! だって、昼間もずっと…… あ。だから? もしかしたらどこかで昼夜が逆転してるのかと思って、それで行動を記録してみたの?」

 聖天女様の声を潜めた動揺に、同意を込めてゆっくり頷く。

 睡眠を一切取らない生活なんて、人間世界では絶対にありえない。
 人間の体にとっては、一切眠らないで得られるモノより、毎日しっかりと眠って得られるモノのほうが、遥かに重要だからだ。
 この辺りは勇者達と実際に関わって学んでるから、精霊でも知ってる。

 なのに。
 アーさんは毎日何時頃にどれだけ眠ってるのか、さっぱり分からない。

 常時、隙がない笑顔を振り撒きながら働き通してるんだし。
 一日のどこかでは、必ず休みを入れてる筈。
 ……なんだけど……
 記録をどれだけ見直しても、アーさんを観察しても、やっぱり判らない。

「見ていただいた通り、人間が必要とする最低限の睡眠時間を挿む余地が、どこにもありませんでした。もしもアーさんが本格的に眠ってる時間があるとすれば、アーさん本人が「最も多くの信徒が集まる二回目のお説教は特に集中したいので、この時間だけは、一人にさせてください」って言ってた、朝の九時から十時までの一時間しかありません。でも人間であるアーさんが一日一時間程度の睡眠で、あんなに軽快に動き続けられるのでしょうか?」

 絶句。
 今の聖天女様
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