第二章
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「その様なことはしない」
「貴殿の手からもらいたい」
「そうしてくれるのが礼儀ではないだろうか」
「そうしたいのは山々さ」
イリアは三人に苦い顔で答えた。
「俺だってな、しかしな」
「しかし?」
「しかしというと」
「何かあるのか」
「俺は立って歩くことが出来ないんだ」
その苦い顔での言葉だった。
「生まれてからな、だからあんた達にパンや酒をその手で渡すことは出来ないんだ」
「そうしたものがある場所まで手が届かないからか」
「立って歩けないから」
「だからか」
「そうだよ、だからあんた達で持って行ってくれ」
イリアは巡礼の者達に再び言った。
「そうしてくれ、いいな」
「いや、それならばだ」
巡礼の者のうち一人がここでイリアに強い声で言った。
「大丈夫だ」
「大丈夫?何がだ」
「そなたの心を聞いた、やはりそなたはだ」
彼はイリアをじっと見据えてさらに言った。
「ロシアに必要な者だ」
「俺がか」
「貧しいながらも寛容で優しい心、その心こそがだ」
「このロシアにかい」
「信仰心もある、その様な者が力を持てば」
そうすればというのだ。
「必ずロシアの危機を救う者になるだろう」
「歩けない俺がかい、そんなことがあるものか」
「いや、立て」
二人目の巡礼の者がここで強い声で言った。
「そなたは」
「俺が?」
「そうだ、そなたの名はもう知っている」
二人目のものはイリアにこうも言った。
「イリア=ムウロメツだな」
「ああ、そうだが」
「そなたは今から建てる、そして歩ける」
「馬鹿なことを言うもんだな」
「では立ってみよ、そして歩いてみよ」
イリアに有無を言わさぬ言葉で告げた。
「そうしてみよ」
「こうかい?」
イリアは二人目の巡礼の者の言葉に頷いた、それでだった。
彼の言葉を全く信じないながらも立とうとする動きをした、両親がいつも何なくそうしている様に。
出来る筈がないと思っていた、だが。
何と立てた、そしてだった。
歩く動きもしてみた、するとこちらもだった。
出来た、それで彼は驚いて言った。
「俺が立って歩けてるなんだ」
「わかったな、これで」
「奇跡だ、それじゃあな」
イリアは生まれてはじめて立って歩ける状態になり飛び上がらんばかりに驚き喜んでいた。しかしそれならとだ。
巡礼の者達に自らパンと酒を持ってきて渡して食わせた、すると三人目の巡礼の者もイリアに言ってきた。
「そなたも飲むか」
「酒をか」
「そうだ、客人に勧めてくれたのならな」
それならというのだ。
「もてなしてくれる者もな」
「飲んでいいっていうのか」
「飲んでくれるか」
「そう言うならな」
イリアも受けた、そしてだった。
三人目の巡礼の
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