第一章
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阿国と信長
その者の名を安土城で聞いてだった、織田信長はまずはこう言った。
「出雲の阿国と申したな」
「はい、その者が今都で評判になっています」
森蘭丸が信長に話した。
「大層見事な舞を舞いそしてです」
「そ美しさでもか」
「評判になっています」
「そうか、ではな」
「はい、この安土にですか」
「その阿国という者を呼ぶのだ」
こう言うのだった。
「そしてわしの前で舞を舞わせるのだ」
「わかりました」
蘭丸は信長の言葉に頷きすぐにだった。
自ら都に赴いてそのうえで阿国を安土に呼んだ、すると阿国は都の芝居小屋の中で話を伝えに来た蘭丸に答えた。
「有り難きお言葉、それでは」
「うむ、すぐにだな」
「安土に向かわせて頂きます」
是非にと言うのだった。
「そうしてです」
「上様の御前でだな」
「私の舞を舞わせて頂きます」
「それではな」
「これよりですか」
「そなたを安土に案内しよう」
蘭丸は自ら言ってそうしてだった。
阿国を安土に案内した、言うまでもなく阿国の芝居小屋の者達も一緒でその中には非常に整った顔の若い男がいた、その男を見てだった。
蘭丸は彼のところに行ってそのうえで彼自身に尋ねた。
「貴殿は確か蒲生殿の家臣であられた」
「はい、名古屋山三郎です」
自らだ、山三郎は阿国に答えた。
「それがしは」
「蒲生殿に暇を申し出たと聞いていましたが」
「はい、そして今はです」
「この芝居小屋におられますか」
「そしてこの者を助けています」
山三郎は阿国に顔を向けつつ蘭丸に答えた。
「そして芝居を」
「そうしておられますか」
「はい、今は」
「そうでありましたか」
「よき日々を過ごしています」
笑みを浮かべてだ、山三郎は蘭丸に答えた。
「この者と芝居と共に」
「それは何より。では貴殿も」
「はい、安土に参上させて頂きます」
「それでは」
蘭丸は彼もまた安土に案内した、そしてだった。
阿国一行は安土に来た、そのうえ信長の前に参上した、すると信長は阿国を見てまさに一目でだった。
心を奪われた、そうして。
その彼女にだ、こう言ったのだった。
「都から安土までよく来てくれた」
「はい、それでは今より」
「いや、ここまで来て疲れておるであろう」
それでというのだ。
「だからまずは休め」
「そうして宜しいですか」
「明日までゆっくりしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「明後日にな」
「舞をですか」
「舞ってもらおう」
こう言って今は阿国達を下がらせた、そのうえで彼は案内役を務めた蘭丸に対して言った。
「噂以上の美しさだな」
「阿国殿は」
「うむ、天女いや」
信長は自分の言葉を訂
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