第三章
[8]前話
それでマーナーを弔った、そうして彼を墓に埋めてからだった。
彼が残した遺書、遺産のことを書いたそれが司祭の手で開かれた。すると司祭は思わずこう言ってしまった。
「な、これは」
「どうしたんだい、司祭さん」
「一体」
「いえ、まずは薬屋さんにですが」
彼にとはというと。
「これまでツケを認めてくれたお礼にです」
「わしへのお礼に」
「はい、全ての宝を蔵す土を」
それをというのだ。
「差し上げるとです」
「書かれていると」
「そして判事さんにはです」
次は彼だった。
「正しい判決を下せる様に堅い石を」
「私に石の様に正しく強く」
「そうなる様に」
「差し上げるとのことです、そして私には」
自分にはとだ、司祭は最後に自分自身への遺産のことを話した。
「草を育てる土と教会を修理する石を」
「その二つを司祭さんに」
「遺産として差し上げると」
「こう書かれています、何かどうにも」
まさにというのだった。
「これはもう」
「最後の悪戯だな」
「本当に」
「そうですね、何かと思ったら」
それこそというのだ。
「最後の最後にです」
「こんな悪戯を仕込んでるとか」
「ないよな」
「全く以て、どうにもならないというか」
まさにと言うのだった。
「マーナーさんは最後の最後までマーナーさんですね」
「全く、遺産を渡すと言えば石と土で」
「そんな何でもないもので」
薬屋と判事もたまりかねた顔で話した。
「最後の最後まで仕掛けるとは」
「何というか」
苦い顔で話してだ、そのうえで。
司祭にだ、今度は笑って話した。
「いや、もう最後までマーナー爺さんだった」
「そう言うしかないな」
「はい、最後の最後まで悪戯をしてくれましたね」
司祭も応えた、そしてだった。
マーナーの遺産を受け取った、そうして笑顔で彼の最後の審判でのよき判決を願うのだった。
この話はティレル=オイゲンシュピーゲルの悪戯話として残っている、ドイツでは昔からある話で今も語り継がれている。この悪戯好きの百姓は死んでも悪戯を残していった。そして人々にも逸話を残していったのだった。悪戯をしていった彼は悪戯も残してそうして今は最後の審判を待っている。神が彼に下す審判はどういったものか。それはまだ誰にもわからない。
とんだ遺産 完
2018・4・11
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