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ラジェンドラ戦記〜シンドゥラの横着者、パルスを救わんとす
第一部 原作以前
第三章 神前決闘編
第十一話 美女駆込
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子!私はあの人が恐ろしいの!もうあの人の側には居られない、ううん、居たくないの!」

涙ながらにしがみつかれたものの、俺にとっては寝耳に水。まさにポカーンと言う感じだった。は?誰が何だって?兄上か?兄上のことかー?いやいや、そんなバカな。あれからあんなにまともになったやん?んな訳があるはずが…って思いはどうやらダダ漏れだったらしい。俺は兄嫁にキッと睨まれた。

「あの人は、ガーデーヴィ王子は、変わってなんかいないわ!傲慢で独善的な考え方は昔のままよ。ただそれをうまく隠すことが出来るようになっただけ。その証拠に、これを見て!」

ローブを取り去った下にあったのは、おお!何と素晴らしいプロポーション!ではなくて、サリーに隠れていない部分だけでも夥しい数の青あざや生傷!馬鹿な、まさかこれを?

「そうよ、あの人よ!あの人はね、夜な夜な私に暴力を振るいながら恐ろしい事ばかり話すの!『即位したら、まずあの愚弟を生きながら賽の目に切り刻んで殺し、犬の餌にしてやろう。それから愚弟の指図にしか従わぬ諜者の女どもは手足の腱を切った上で奴隷どもに投げ与えて存分に嬲らせた後、最下級の売春窟に沈めてやる。そして、愚弟の支持者どもは―』」

「おい!」

俺は思わずサリーマの言葉を遮っていた。ふざけるな、ふざけるなよ、あいつ!

「あいつらに、諜者たちに何の咎がある。あいつらは俺のために働く事がこの国のためにもなると信じてくれていただけだ。確かに俺は卑しい生まれでムカつく事ばかりしてたかもしれんが、何故あいつらを巻き込む必要がある?…ちょっと待て、今あいつらどこだ?」

最近、兄上が自分にも諜者を使わせて欲しいと言い出して、何人かは王宮に詰めるようになってはいたが…。

「カルナ殿や女の子たちは私を逃がそうと身を挺して…。何とか脱出するつもりとは言っていたけど…」

おい、ふざけるなよ、兄貴!俺はあんたと仲良くやれてると思ってたんだ。この先もずっとこのままうまくやれると思ってた。なのに、あんたは裏切ったな?俺の気持ちを裏切ったんだ!

深呼吸を二度三度と繰り返し、何とかサリーマのために優しい声色を作った。

「サリーマ殿はこの屋敷に居てくれ。俺はこれから王宮に向かう!」

「ラジェンドラ王子?一体何を?」

知れたことだろ?あいつに、兄貴に神前決闘を申込み、あいつを王太子の座から引きずり下ろす!
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