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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 4
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然よ。いちいち気にしてたら、キリがない

「ええ、私もそう思う。世界で観測される事象には例外なく多面性がある。受け取り方なんて、それこそ、人の数だけ存在するでしょう。そのすべてに応えなきゃいけない義務なんか、どこの誰にもない。応えようとする姿勢を否定するつもりはないけど、応えられなかったことを責める必要もないわ。貴方は、大勢いる人間種族の中の一人でしかないのだから。なによりティー本人が気にするなと言ってるんだから、それで良いんじゃないかしら? ね、ティー」
「にゅむ」

 鷹揚(おうよう)に頷いたティーが、抱えているカップを再度空にした。
 けふっと息を吐き、困ったような顔で笑うアーレストさんへと押し出す。

「……貴女方には敵いませんね……。ありがとうございます、ティーさん、マリアさん」
「にゃっ!」

 爽やかな香りと湯気を立てて注がれる、澄んだ金茶色の液体。
 ポットの中で温度を保っていたそれに、諸手を挙げて飛びつくティー。
 よっぽど気に入ってるのね、ミントのお茶。

「ねえ、ティー。いくらアーレストさんが勧めてくれてるからって、一度にたくさん飲み過ぎると、お腹がタプタプになるわよ?」
「にょんにゃいにゃい」

【竜族語??人間語翻訳】
問題ない

 既に膨らみ始めているお腹を、指先で横から突いてみたら、結構な弾力で跳ね返された。
 これは()()後で苦しむわね、絶対。

「もう」

 フィレス様とソレスタさんの不在を誤魔化す為に、最低限二人分の食料や生活費用を消費する必要があるから、私達も時折御馳走になっているけど。
 私もティーもリースリンデも、本来は食物を摂取する習慣がない。
 食べられないわけじゃないけど、あえて食べる必要がない。
 そういう生物だ。

 まして、今の私達の器は、基本的に成長(へんか)しない作り物。
 不必要な食物を消化するには、人間の数倍は時間が掛かる。

 それなのに、アーレストさんが淹れるお茶の味を覚えてからというもの、ティーの食欲は留まるところを知らない。
 この小さな体のどこに入っていくのか、横になるのも辛いと言い出すまで延々と飲食を続ける姿は、見ているこちらに一種の恐怖を植え付ける。

「ごめんなさい、アーレストさん。茶葉を大量に浪費させてしまって」
「いえいえ。食欲がない代わりにお茶を飲んでいると言えば、すべて経費で賄えますから。ティーさんとリースさんが飲まれる分のお水はマリアさんにご用意いただいた物なので、こちらの負担にはなっていませんし。むしろ、不自然な減算にならなくて非常に助かっています。ただ……苦しそうな姿を見かけると、そのまま体調を崩してしまわないか心配にはなりますが……」
「ああほら、ティー。お世話になってる
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