第一章
[2]次話
人間になった理由
ハナは大学生だ、だがその彼女が実はカタツムリが人になったことを知る者は人間では誰もいない。
彼女自身が語らないことであるし外見や生活にそうだと思われることは一切出ないからだ、その為だ。
彼は温和で平和主義、とてものんびりとした女性として知られていた。それでアルバイト先の農家でもだ。
のどかだが真面目に働く彼女にだ、農家のおじさんはこう言った。
「ハナさんはいい娘だよな」
「ええ、そうよね」
おじさんの奥さんもこう言うのだった。
「とてものどかでね」
「しかも優しくてよく気がついてな」
「本当にいい娘だよ」
「うちの嫁に欲しい位だね」
「うちは娘しかいないがな」
「その娘達もよく懐いてね」
「あんないい娘はいないよ」
動きは確かに遅いが真面目にしっかりと一つ一つの仕事を確かにこなしていくハナはアルバイト先でも評判がよかった、しかも。
農作物だけでなく植物全体の知識も豊富だ、それで農家にとっては余計に有り難い存在だった。そして虫にもだった。
詳しくそのことも助かっていた、しかしハナは家に帰ると。
水槽の中にいるナメクジやカタツムリ達に語り掛けていた、それは人間の言葉ではなかった。
「只今〜〜」
「ああ、おかえり」
「今日も平和だったかい?」
「何もなかったかい?」
「うん、なかったよ」
そののどかな口調で答えるのだった。
「平和だったよ〜〜」
「それはよかったな」
「やっぱり平和が一番だな」
「わし等ナメクジやカタツムリはな」
「塩と争いがないのが一番だよ」
「うん、お塩派少しならいいけれど」
ハナは塩についてはこう言った。
「どうしてもね」
「人間になってもな」
「塩が多い食べものは駄目だな」
「そうだな」
「うん、お塩はね」
どうしてもと言うのだった。
「いいから」
「そうだよな」
「その塩と争いがない」
「あとマイマイカブリも鳥もいない」
「そんな世の中が最高だな」
「そうだよね、だから今日もね」
水槽の中にいるナメクジやカタツムリ達にさらに話すのだった。
「平和だったよ」
「それは何よりだな」
「本当にな」
「じゃあ今日も休むか」
「そうするか」
「そうするよ。ただね」
ここでこうもだ、ハナは言った、どうにもという顔になって。
「一つ気になることがあるの、最近」
「どうしたんだ?」
「学校かアルバイト先で何かあったのか?」
「平和だよ、どっちも」
即ちそうした場所で気になることではないというのだ。
「のどかで皆優しいよ〜〜」
「じゃあ何なんだ?」
「何が気になるんだ?」
「一体どうしたんだよ」
「うん、私どうして人間になったのか」
このことがというのだ。
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