彼と彼女の出会い 後編
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輝は何かを決意して合わせていた目線を外す。
「連れていってあげるよ」
奏輝は少女に手を差し伸べる。少女は奏輝を少しの間見つめていたものの、直ぐに「うん!」と元気にその手を取った。
「早く早く!」
少女はさっきまでの態度が嘘のように元気に走り出した。駅とは正反対の彷徨へ。
「そっちじゃないよー!」
奏輝の大声に、少女は顔を赤くしてトボトボと戻ってきた。
「お願い、します……」
キュッと奏輝の服の裾を掴む少女。奏輝は優しく「離れないでね」と言って駅に向かって歩き始めた。
────────────
歩いている途中、少女は嬉しそうに自分の事を語っていた。と言っても、大半は「お姉ちゃん凄いんだよ!」や「妹が凄い凄い可愛くて!」と、とても微笑ましいものだった。その都度奏輝は「そうなの」や「へぇ」「うんうん」等、上手く聞き手に回っていた。
「やっぱり、お姉ちゃんは凄いし、妹は可愛いよね」
奏輝は少女と全く同じ家族構成に共感したのか、その日初めて自分の事を話した。
「貴方にもお姉ちゃんと妹さん居るの?」
「うん、3つ上のお姉ちゃんと、3つ下の妹が居るよ」
「私とおんなじだ! 凄いね!」
少女は依然として楽しげに奏輝に話しかけているが奏輝の意識は別の方向へと向いていた。
──人通りが少なすぎる。平日の午後だからかもしれないけど、それでも人が居ない。それにいつの間にか跡をつけられているのかな。黒服の人が此方をさっきから見ている……ような気がする。
チラッと、奏輝は楽しげに話している少女の服装を見る。見るからに高そうな服で、持っているポーチは姉妹が「欲しい!」とおねだりしていた小中学生対象のブランド物のようにも見える。「いつもは車で──」とか「初めて電車に──」と言ってる事からお嬢様だということは容易に想像できた。ならば後ろの黒服はボディーガード、若しくは──といかにも物語っぽい事を想像した自分の考えを消した。
「────ター、ト──了解」
奏輝の耳に、低く小さいがそんな声が届いた。声の主は恐らく後ろの黒服の男。奏輝は寒気を感じながら少女の手を引いて歩みを進める。なるべく、人が居るところに──
「ねぇねぇ、聞いてる?」
横からクイクイと腕を引っ張られ、奏輝は意識を少女の方に向けた。
「……あ、ごめん。ちょっとボーッとしてた……」
「もう! だからね……わ、私とあなたのお姉ちゃんと妹さん……誰が一番可愛い?」
「えっ?」
突然の質問に奏輝は足を止める。少女は「わわっ!?」と驚きながらも止まって奏輝を見上げている。
「えっと……それは……」
どもっている奏輝の顔を期待と不安の眼差しで少女が見つめる。
「君が
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