彼と彼女の出会い 前編
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めて立ち去ろうとしたその時。
「あの……迷惑でなかったらどうぞ」
右側から声をかけられた。振り向くとさっきコーヒーを買っていた少年が左手に持ったコーヒーを幸奈へと差し出していた。
少年の顔は幸奈から見たら優しさの塊のように見えた。外見は黒髪の黒目、長めの前髪が右目を隠しているが、至って普通に整った顔。しかし表情がとても優しげで、見ず知らずの人間に向ける表情ではなかった。
「えっと……」
咄嗟の事に、幸奈の反応が遅れると少年は「ああ」と何か納得したような声を出す。
「気になって見たら、商品を持たないでそのまま立ち去ろうとしていたので、商品が出ず、金も返却されなかったのかなって思い、つい声を……」
少し、恥ずかしげな笑顔で少年は説明する。見ると右手にも同じコーヒーを持っている。
「い、いえ……悪いですよ」
当然、幸奈はそれを遠慮する。初対面の人だからという事もあり、物を貰うのは気が引けた。
しかし、少年は今まで関わってきた男性のような悪い空気は纏っておらず、自然と警戒心は解け、懐かしいような安心できるそんな雰囲気を彼は纏っていた。
「あー……運良く当たったんですよ、コレ。当たったのはいいんですが、二本は流石に邪魔ですし……不運な出来事に遭遇してしまった貴女に幸運のお裾分けって事でどうでしょうか?」
その善意に幸奈は返す言葉が無かった。少年は自分が気にしなくてもいいように優しい言葉だった。
「それじゃあ……ありがとうございます」
幸奈はコーヒーを受け取って胸の前まで運び、少年に微笑む。少年は顔を赤らめ、恥ずかしさを紛らわそうと頭を掻く。
「ご活躍を応援しています。桐凪幸奈さん」
「あ、ありがとうございます。どうして名前を……?」
純粋な疑問として、幸奈は首を傾げる。それに対して少年は
「今日は、友人に連れられて来たのですが、目的が貴女だったんですよ。有名人見たさ……ですかね。なので名前と容姿は先程の練習の時に知りました」
「そう……」と幸奈は納得する。少年は一回微笑み、お辞儀をしてから踵を返す。
「それでは」
「あ、あの!」
幸奈は咄嗟に声をかけた。少年は振り返り、首を傾げるが迷惑そうな顔はしていない。
「な、名前と学校を……お、教えてくれませんか?」
自然と出てきた言葉に幸奈は慌てる。言い終わってから恥ずかしがって顔を俯け「その……」や「えっと……」等言っている。
少年は驚いたような表情で少し固まっていたもののまた笑って口を開く。
「高雲中学2年生の空浪 奏輝です。普通の空に波浪の浪、奏でて輝くで空浪奏輝です。……差し支え無ければ貴女のお名前も教えて下さい」
「反雲中学2年生の桐凪、幸奈です。漢字は
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