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祭りに出れば
第一章

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               祭りに出れば
 九条ひかりは蕎麦が大好きだ、だが蕎麦だけでなくたい焼きやソーセージも好きだ。それでだ。
 祭りがあるとだ、いつもこう言った。
「ソーセージ、フランクフルトにたい焼きがあったら」
「行くんだな」
「そうするのね」
「ええ、この二つがあったらね」
 家で兄と姉にも言うのだった。
「絶対に行くけれど」
「その二つは絶対にあるだろ」
 それこそとだ、兄はひかりに返した。
「お祭りの出店にな」
「そうよね」
「だから御前お祭りにはいつもだな」
「行ってね」
 家の近所、ひいては大阪の主な祭りにだ。これは初詣の時も同じだ。初詣はその年によって行く神社が変わるが必ず大阪市内の大きな神社に行っている。
「他のものも色々食べるけれど」
「ソーセージとたい焼きはだよな」
「食べてるわ」
 この二つは何といってもというのだ。
「欠かさずにね」
「そうだよな」
「おそばもよね」
 今度は姉が言ってきた。
「やっぱり」
「ええ、焼きそばをね」
 それをというのだ。
「買ってね」
「そうしてよね」
「食べてるわ」
 まさにというのだ。
「焼きそばもね」
「結局おそばもなのね」
「あれはお蕎麦じゃないから」
「蕎麦粉を使ったものじゃないから」
「また違うのよ」
 『そば』といってもとだ、ひかりはこのことは断った。
「けれどね」
「やっぱり食べるわね」
「それでソーセージとね」
「たい焼きは」
「絶対に食べるから。今度のお祭りでも」
 家の近所で行われるそれにもというのだ。
「行ってね」
「そうしてよね」
「食べるわ」
 絶対にという返事だった。
「学校の皆と一緒に行くから」
「じゃあな、楽しんで来いよ」
「お母さんにお小遣い貰ってね」
 兄と姉はひかりに優しい声をかけた、末っ子のひかりは二人に子供の頃から可愛がられているのだ。それでだった。
 ひかりはその祭りの日母に浴衣を着せてもらってからそのうえで祭りに出た、そうして待ち合わせ場所で友人達と合流してだった。
 出店の列の中に入った、そして目指すものは何といってもだった。
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