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真田十勇士
巻ノ百四十六 薩摩入りその八

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「そのことがです」
「変わったか」
「はい、木下家から人が来て申し出てくれたのですが」
「まさかと思うが」
「どうも幕府も見て見ぬふりをする様で」
「国松は木下家の者となってか」
「一万石で」 
 家久は石高の話もした。
「大名になると」
「その様にしてくれるのか」
「はい、そう申し出てくれていますが」
「そうか、国松は大名か」
「如何でしょうか」
「もう余には何も言うことは出来ぬ」
 秀頼は家久にこう返した。
「だからな」
「このことはですか」
「うむ、幕府が見て見ぬ振りをするのならな」
「それならばですか」
「木下家に任せる」
 北政所の兄の家であるこの家にというのだ。
「全てな」
「それでは」
「全ては木下家に任せる」
 国松のことはというのだ。
「その様にな」
「わかり申した」
「そして余はな」
「この薩摩で」
「その様にする」
「それでは」
「そしてじゃが」
 ここでだ、秀頼は自分から家久に話した。その話はというと。
「実は家臣の者達がな」
「幕府、いえ大御所殿にですか」
「そう考えておるが」
「当家は何も知らぬこと」
 家久は微笑み秀頼に答えた。
「真田殿は大坂で見事に果てられました」
「だからか」
「はい、長曾我部殿も四条河原でそれがしがお会いしました」
 そうなっているというのだ。
「雨の中あの御仁に傘を差し上げました」
「そして首を刎ねられたか」
「この世にはおられませぬ」
 こうなっているからだというのだ。
「ですから」
「よいか」
「はい」
 秀頼への返事は一言だった。
「その様に」
「そう言ってくれるか」
「もう死んでおられます」
 幸村も長曾我部もというのだ。
「ですから」
「もうか」
「死人が動くなぞありませぬ」
 あくまで死人ということにして話す家久だった。
「ですから」
「そうか、ではな」
「はい、それがしは一切です」
「何もせずにか」
「そう致します」
「ではな」
 秀頼は家久の言葉に頷いた、そしてだった。
 彼は秀頼主従に屋敷を用意しそこに住んでもらい彼等の生活の面倒を見た、幸村も己に用意してもらった屋敷に入り。
 大助そして十勇士達と共に暮らしはじめた。その暮らしはというと。
 ごく自然にだ、落ち着いたものでだ。
 幸村は屋敷で鍛錬の後で十勇士達に話した。
「こうしてな」
「はい、鍛錬を続け」
「時が来れば」
「その時は」
「その時は間近じゃ」
 ここで幸村の目が鋭くなった。
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