第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
洞窟にいざなわれて
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されてるのだと思い、横目でにらみ返した。
「な、何だよ、その顔。気になってんなら見てくりゃいいじゃん」
「じゃあお前が見て来い」
そういってユウリは、後ろから思い切りナギの背中を蹴飛ばした。
するとナギは、断末魔の叫びのような声を上げて、穴の中へ落ちていった。
「ナギちん戻ってくるかな?」
?? ナギちん? ああ、ナギのことかぁ。
なんてのんきなこと考えてたら、いまさらながら大変なことになったことに気がついた。
「ゆ、ユウリ!! どうするの!? ナギ、落ちちゃったじゃない!!! もし戻ってこなかったらどうするの!!??」
するとユウリは平然とした顔で、
「穴の様子を見れば、この下が広い空間で、さらに空気の質と音の違いで危険が少ないことぐらいわかるだろ」
って、何事もないように答えてくれた。
確かにその下が底なし沼だったり、火の海じゃないってことはわかるけど……。もし変な落ち方して骨折でもしたら、しゃれにならないと思う。
「……って、危険が『少ない』ってことは、『ない』わけじゃないってこと?」
「昔からこの洞窟には、魔物が数多く生息しているという噂があるからな。運が悪ければ今頃魔物に襲われてるかもしれん」
「ええええええ!!??」
全く表情を崩さずに、勇者は言った。
私はあわててナギが落とされた穴に飛び込んだ。
いざないの洞窟に入る前、世間話程度にナギと話していたんだけれど、そのときに自分は、塔から一度も出たことがないと聞いた。
「オレのじいちゃん、ああ見えても心配性でさ。近くの村にすらつれてってもらったことがねーんだよ。何年か前に、オレの遊び相手ってことで、その辺のおっさんとっ捕まえてここに住まわせたらしいんだけどさ」
「遊び相手? ってもしかして・・・・」
「そ。塔の一階にいたべ? 宿屋開いてたおっさん、タリオってんだけど、あの人、じいちゃんがどっかから連れてきてさ、もともと子供好きだったみたいで、昔は結構オレと遊んでくれてたんだ。でもオレがだんだん一人で盗賊の修行をするようになって、タリオは行くあてもないってんで、勝手に宿屋始めちゃったわけよ。つったって、こんなところに来るやつなんか冒険者ぐらいしかいないから、たんなる暇つぶしなんだろうけどな。そんでなんだかんだで月日は流れて、結局一歩も塔の外に出ないまま、あんたらの仲間になったってわけ」
なるほど。あそこにいた宿屋の主人は、ナギの遊び相手として連れてこられた人だったんだ。
そう考えると、ますます不思議だ。そもそもナギのおじいさんは、なぜナギを塔の外へ出したがらなかったんだろう。
と、あの時はそんな考えしか浮かばなかったんだけど。
つまり外に出なかったってことは、実戦経験もゼロなわけで。
まあ、私もレベル1だし、経験で
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