第三章
[8]前話
「だからな」
「声でわかるか、暮らしも」
「実際にな、それで御前のその声を聴けてな」
璃雨のそれをとだ、親友は言うのだった。
「よかったぜ」
「そうか」
「ああ、それでな」
「今度は何だ」
「今度会う機会があったらな」
その時のこともだ、親友は言ってきた。
「飲むか」
「いいな、何を飲む」
「バーボンはどうだ?」
親友が言う酒はそちらだった。
「それを飲むか」
「いいな、酒か」
「今も飲んでるだろ」
「バーボンもな」
「だったらな」
「ああ、今度会ったらな」
「一緒に飲もうな」
こうした話をした、そしてだった。
スマホを切った、そうしてからだった。璃雨はまた犬や猫達の世話をしていたがそこに執事が来て彼に言ってきた。
「お嬢様がお呼びです」
「お嬢様が」
「はい、外出するので」
それでというのだ。
「僕もですが」
「お供をだな」
「して欲しいとのことです」
「わかった」
璃雨の返事は一言だった。
「それじゃあな」
「今からですね」
「お供させて頂こう」
璃雨は執事に微笑んで答えた。
「これからな」
「はい、じゃあ行きましょう。しかし」
「しかし。何だ」
「璃雨さんやっぱりあれですね」
執事もだ、璃雨に笑って言った。
「前のお仕事は幼稚園の先生か動物の世話をしていましたね」
「またそう言うのか」
「だってとても優しい目をしていますから」
自分に応えてくれる彼のそれの目はというのだ。
「ですから」
「そう言うんだな」
「そうですよね、やっぱり」
「どうだろうな、しかしな」
「はい、お嬢様がお呼びなので」
「犬や猫の世話は誰かにお願いするか」
屋敷の中にいる手の空いている者にというのだ。
「そうしてな」
「僕達はですね」
「お嬢様のお供をするぞ」
「わかりました」
執事は璃雨に応えた、彼が見ている彼のその目は今も暖かいものだった。まるでいつも子供や動物達を優しく見守ってきた者の様に。
優しい用心棒 完
2018・7・22
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