純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 3
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いのだと。
誰かを愛する術を、きちんと伝えてあげられなかった。
身近に居る者としての責務を果たせなかった。
それが哀しい。
それが口惜しいんだ。
(親しい者の幸福を願いながらも、及ばなかった力を嘆く涙。私達はまだ、未来を指し示す為の旗すら、見つけていない)
「そうね」
プリシラ様が数回目蓋を開閉して涙滴を掃い、ふんわり微笑む。
「私も、貴女と同じ答えよ。私には何もできない。でも、何もできないのは口惜しいから、何もしてあげないの」
「ずいぶんとややこしい結論に達しましたね」
「あら。簡単な話よ?」
「ええ。今なら、私にも解ります」
プリシラ様は私を、私はプリシラ様を体の正面に迎え、同時に息を吸い。
同時に答えを合わせた。
「「貴方の望みなんか、叶えてあげない」」
ふふっ と、プリシラ様が満足気に目を細めて笑う。
「正解。誰にどう見られているかで自分の立ち位置を把握した人間ってね、相手の言動に対して無意識のうちに、自分はこうなんだ、これで良いんだと安心しちゃうものよ。だから私はあの子との距離感を明確にはしなかった。あの子は今頃、貴女と同じように、どうして何もされなかったんだろう? これから何をされるんだろう? なんて、不安でいっぱいになっていることでしょうね。いい気味だわ!」
罪人が罰を望むのなら、何かをして責めるのではなく、何もしないことで責め苦を持続させる。決して解消なんかさせない。
これは二人だからこそ、クロスツェルさんとプリシラ様の間柄だからこそ効果的な『罰』なのだろう。
(私も、いつどこでどんな形でお仕置きをされるか判らないっていうのは、すっごく嫌だ。プリシラ様相手だと特に。……あの人達、滞在中はずーっとびくびくしながら過ごすんだろうなぁ……)
プリシラ様の前で、気まずそうに目線を泳がせる男性達。
その姿を想像したら、ちょっぴり楽しくなってしまった。
私という人間は、結構性格が悪いのかも知れない。
「さて、と。これから役持ち達相手に一芝居打たなきゃいけないんだから、その悪巧み顔は引き締めなさいね」
「! すみません」
執務室の扉を横目に見ていた私の頭を軽く撫で、礼拝堂へと足先を向けるプリシラ様。
私も、慌ててその背中の半歩後ろに付いて行く。
いけない、いけない。
無表情、無表情……
「それと。フィレス様には、最後まで事情を説明して差し上げなさい」
「ぶふっ!」
「あの二人、始めの一歩も踏んでないんだから。ぎこちない空気をこのまま放置しておいたら、絶対悪いほ
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