純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 3
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であるロザリア様が現在彼の傍に居る意味を無視して、「常識」や「不快感」を盾にあの子を糾弾しても良いと思う? 残り一年も無い所まで命を削ったと言われているあの子に、これ以上何を背負わせれば適切な対応だと言える?」
「……っ」
プリシラ様の頬に伝う、一筋の涙。
(常日頃から感情を表出するなと言っていたプリシラ様が、私の前で「泣く」なんて……)
涙は、凄惨な過去を背負っているクロスツェルさんへの同情? それとも、かつての仲間が暴挙を働いた事への失望と怒り?
(……違う)
次期大司教を自負する高潔な彼女が、そんな安っぽい感情に左右される筈がない。
(プリシラ様は……)
「…………わかりません。でも、クロスツェルさんの行いが看過されて良いものではない事だけは確かです。こうしている間にも、あの人は罪を増やしている」
右手で自分の袖を摘まみ、ぴくりとも動かないプリシラ様の頬をそっと拭う。
「あの人がどんなに辛い道を歩んで来たかなんて聴かされても、私はあの人に良い感情を抱けません。そんな背景があったのなら仕方ないですよね、とも思えません。同情の余地も一切無い。かと言って、ロザリア様との関係を責められる立場にも在りません。私にとってのあの人は、「私が敬愛する貴女を傷付けている人」に過ぎませんから」
近くに居たのに。
同じ中央教会で、同じ志を持って、同じ時間を過ごしていたのに。
プリシラ様には救えなかった。
クロスツェルさんの苦しみに寄り添ってあげられなかった。
貴方も誰かを愛して良いのだと。
誰かを愛する術を、きちんと伝えてあげられなかった。
身近に居る者としての責務を果たせなかった。
それが哀しい。
それが口惜しいんだ。
(親しい者の幸福を願いながらも、及ばなかった力を嘆く涙……。私達はまだ、未来を指し示す為の旗すら見付けていない)
「そうね」
数回目蓋を閉じて涙滴を掃ったプリシラ様が、手を下ろした私にふんわり微笑む。
「私も貴女と同じ答えよ。私には「何もできない」。でも、何もできないのは口惜しいから、「何もしてあげない」の」
「随分とややこしい結論に達しましたね」
「あら。簡単な話よ?」
「ええ。今なら私にも解ります」
プリシラ様は私を、私はプリシラ様を体の正面に迎え、同時に息を吸い
「「貴方の望みなんか叶えてあげない」」
同時に言葉を発した。
ふふ と、プリシラ様が満足気に目を細めて笑う。
「正解。誰にどう見られているかで自分の立ち位置を把握した人間は、無意識の内に「自分はこうなんだ」「これで良いんだ」って安心しちゃうものよ。だから私は、あの子との距離をわざと明確にしなかった。今頃、貴女と同
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