純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 3
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「はい」
「罪人は何故、裁かれなければいけないのかしら」
「多くの例では、人間種族の保護。その為の規律に反し、被害者への行動を通して社会全体に悪影響を与え、短期あるいは長期的に俯瞰した際、種族の存続方法に亀裂・ないし欠損を生じさせたと見なされるからです。そうした罪人を罰する行為には、社会の仕組みを改めて理解させ、己の行動がいかに人間種族、罪人自らをも危険に曝していたかを自覚させる狙いがあります」
「法律的見解ね。貴女個人の主観では?」
「因果応報。他人の痛みを思い知れ」
「簡潔で素敵な答えだわ。でも、それなら」
プリシラ様がピタリと足を止め。
隣に立った私の顔を、感情が無い横目で見る。
「どこの誰よりそれが社会の枠組みに外れた行いであると認識し、誰よりもその行為を忌み嫌い、誰よりもその苦痛を理解していて、それでもなお罪を犯してしまった自分自身を心から恐れて憎み、早く誰かに罰して欲しいと、そう渇望している罪人を裁くことに、果たして意義はあるのかしら?」
「え?」
「クロスツェルはね、子供の頃に、目の前で母親を殺されたの。複数の男に強姦されただけでなく、殴る蹴るの暴行を加えられた彼女の遺体は腐敗し、千切られた四肢が周辺に散乱していたらしいわ」
「っ……??」
「四歳よ。まだたった四歳の子供が、実の母親が息絶えるまでの一部始終を見せつけられたの。何が起きたのか、当時のあの子は理解できなかった筈。それから数年後、荒れ地に一人でさまよっているところを発見された彼が、彼を保護しようとした人になんて言ったか、想像できる?」
「…………いいえ」
「なんで? 僕はお母さんとテオを殺した罪人だ。殺されるんならともかく家があって良い人間じゃない。ですって」
表情一つ変えず、淡々と紡がれたプリシラ様の言葉に。
側頭部を強く殴打されたような錯覚がした。
耳の奥で、グワングワンと嫌な音が反響する。
「自分が、殺した??」
母親を殺された四歳の子供なんて、どんな状況でも被害者でしかない。
母親を殺した男達や、十歳にも満たない子供を数年間も放置していた社会全体を恨み憎むのならともかく、どうしてそんな思い込みになった??
「浮浪児となってからのあの子が、どこでどんな目に遭っていたのか……。私も詳しくは知らないわ。当時の私に今ほどの力は無かったし、関係資料は教皇猊下が御自らで封印されてしまったから、現在でも調べようがないの」
「教皇猊下が、クロスツェルさんの過去を抹消した、ということですか」
「ええ。そうして中央教会に来たあの子は、誰よりも何よりも他人に危害を加えてしまう自分自身
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