暁 〜小説投稿サイト〜
インフィニット・ゲスエロス
22話→家族(後編)
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だが、出来なかった。

『聞いても、お前じゃどうにも出来ない』

そういった意味の返答が返ってくるのが怖かったから。

無意識に手を見る。

七年間、兄の残した器具や指導書で鍛えた、豆だらけの手。

確かに積み上げたその力で、一夏は兄を少しでも助けられれば。そう思っていた。

(まあ、結果はあの様だけどな)

一夏に他人の心を読める異能があるわけではない。

兄がどのくらい一夏を評価し、本気を出していたかなど、言われなければ分かる訳がない。

事実だけ言えば、兄と一夏の戦闘は一方的な『兄の勝ち』だった。

その事実は、一夏の心に、少なくない傷を作る。

昔、子供の頃は踏み込むことができた、兄との『距離』が、今はひどく、遠かった。

(くそっ、気を抜いたら…………眠く…………)

悩んでいるうちに、戦いの疲労が溜まった一夏の体を、睡魔が襲う。

無理もない、深い怪我等は無かったが、全力で戦闘行動を格上に行った『つけ』は、無意識のうちに一夏の体に負担をかけていた。

そのため、体が休める状態にあることで、蓄積された疲労が次第に表面化。

結果として、既に寝そべっていた体は、容易に眠りに堕ちていった。

…………どれだけ、経った後だろうか?

『やあ、はじめまして』

その言葉が、鼓膜を震わせ、一夏は『起きた』。

一夏の目が、『開かれる』

白一色の、奇妙な空間の中で。

(…………なんだ?ここは?)

先程割り当てられた自分の部屋とは似ても似つかないこの場所に、ただただ困惑する一夏。

「ああ、いたいた!」

すると、いくらもしない内に、何故か家族でも、友人でもないのに聞き覚えのある声が、鼓膜を震わせた。

瞬間、白だけの世界に色がつく。

突如、現れた『銀髪の少女』によって。

自然界では有り得ない銀髪をショートカットに、ノーネクタイのスーツで身を固めた、美しい少女。

(誰だろう…………)

声には聞き覚えがあるが、姿には全く覚えがない。

そんな、不思議な彼女の登場に困惑する一夏を尻目に、彼女は一方的に話し始めた。

「あー、ごめんね遅くなって!脳波トレースシステムを通して、君に逢いに来たんだけど、手間取っちゃった!」

一夏、意味が分からず、困惑する。

だが、相手方もそれは承知していたのか、さらりと銀髪の少女は、続けて言葉を口にした。

「あはは、私の姿は初めてでも、私の声には聞き覚えないかな。これでも、君のおにーさんが送ったシミュレーターのナビをしてあげたりしたんだけど?」

「…………あっ!?」

そうか、それで!


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