第七十一話
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ジリ貧の反対は、ゴリ押しだ。
「やるしかねぇなぁ…………あー、怪我人、増えちゃうなぁ…………。」
とことん、やってみるかな。
―執務室―
「あーもー…………色々台無しだよ…………。」
僕は春雨に放送のスイッチを切らせて、大きな溜め息をついた。
大輝さんから春雨のおっちょこちょい加減は聞いてたから、半分くらいは予想してたけどさ…………まさかここまでとは…………。
本来、三階の階段に居る四人を少しずつ二階に降ろして、二階に降りきったら、自由行動組で捕まえきるつもりだったのに…………。
僕、『作戦を口走らないように気を付けてね』って、わざわざ言ったのに…………。
「ごっ、ごめんなさ…………ん?」
すると、春雨が何かを感じ取ったようだ。机の上に広げていたこの鎮守府の地図に視線を移していた。
「どうしたの?」
「逃チームは今のところ、それぞれの階段に二人ずついるんですけど……若葉ちゃんが、階段を降りてるんですよ。」
「……………………ふむ。」
若葉。本名、一之瀬 瑞希(いちのせ みずき)。自ら望んで艦娘になった稀有な例。
現状、この鎮守府の最古参。この三年間の全艦娘の平均寿命が半年なのに対し、既に三年以上生き延びている。
練度は資料によれば高くないのだが、千尋の話を聞く限り、かなりの実力を持っていそう。
そして、大和のことを知っている……らしい。
「…………えっと、医務室に入っていきました!」
春雨は何度も地図と何もない空中を見比べながら断言した。
「…………ふむ…………ちょっとマイク貸して。」
僕は春雨にそう言うと、放送のスイッチを押した。
「Wakaba ist in der ?rztliches Amt.」
「…………なんで日本語で伝えないんですか?」
僕が放送を終えると、春雨が首をかしげながら聞いてきた。
…………あぁ、そうか。春雨はドイツ語が分かるんだっけ。千尋と一緒に毎朝勉強してたとか。
「そんなの、決まってるじゃないか。特定の人物以外には伝えたくなかったからだよ。」
「…………千尋さん、ですか?」
無論だ。
「さてと…………そこまで賢くないとは思ってるけど、そこまで馬鹿でもないはずだ。察してくれよ…………?」
一抹の不安を覚えながら、机の上に広げていた地図に目をやった。
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