第73話『顕現』
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く、初めてやってみて頭から落ちそうになって以来、晴登は渋々この技を密かにお蔵入りしたのであった。
「・・・と、そんな裏話を思い出しつつ、自分の役立たずっぷりにため息が出る」
「・・・何言ってるのハルト?」
「こっちの話。・・・こうなったら試せるもの全部試してやる! 行くぞ、結月!」
「うん!」ギュッ
晴登は結月と手を握り、互いの魔力を高め合う。そして背中を合わせ、握った手を前へと向けた。今こそいつかの試験で使ったあの技を、もう一度使う時──
「「合体魔術、"氷結嵐舞"っ!!」」ビュオオオ
風が唸り、大気が凍てつき、猛吹雪となって二人の魔術はイグニスを襲う。これには、さしものイグニスの足も瞬時に凍りついた。イグニスは動いて無理やり剥がそうとするが、結月の氷は鬼由来だ。竜とて容易には引き剥がせまい。
「身動きを封じたぞ! チャンスだ!」
ここぞとばかりに、終夜と緋翼、そして婆やも動いた。各々は魔力を溜め、必殺技を放つ。
「冥雷砲!」パシュン
「紅蓮斬!」ボゥ
「霊魂波!」ブォン
三人の強力な一撃はイグニスのちょうど腹部に直撃する。足よりはダメージが通るようだが、それでもイグニスが少し怯む程度だ。致命傷には至らない。
「ちっ、これじゃ埒が明かねぇ!」ダッ
「一真さん!?」
すると一真は何を考えたのか、イグニスに真っ直ぐ突っ込んでいく。晴登の風の加護は健在であり、そのスピードはまさに疾風。すかさずイグニスが手で押し潰そうとするが、一真は巧みな身のこなしで避け、さらにその腕を登り始めた。
イグニスは腕を振って一真を振り落とそうとするが、落ちるよりも早く、一真はイグニスの胸元へと飛び立つ。
「喰らえぇぇっ!!!」グサッ
「──ッ!!」
一真は持っている太刀の先をイグニス胸の中心に向けて、思い切り突き刺した。太刀は長い刀身が見えなくなるほど深々と刺さり、イグニスはようやく苦痛の咆哮をあげる。
返り血を浴びながら、一真は太刀を残して素早く離脱。高所であったにも拘らず、風の加護もあって軽やかに着地した。
「すげぇ……」
一真の華麗な一連の動きに、晴登は思わず感嘆の声を洩らす。もはや人間の領域ではない。彼が同じ世界の人間だとは、にわかに信じがたかった。
イグニスは依然として苦しそうだ。恐らく、今の一撃が最も大きなダメージとなったのだろう。やはり、竜と言っても所詮は生き物なのだ。倒せない訳ではない。
ただ──
「一真さん、刀どうするんですか? あそこに刺さったままですけど」
「あまりに深く刺しすぎて抜けなくなっちまったんだよ。でもまぁ気にすんな。新しいの"創れる"
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