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山内くんと呪禁の少女
変生
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の悪魔ってのは煩悩を擬人化した存在だ。サタンみたいなデビルや、バアルみたいなデーモンだけが悪魔じゃないぞ」
「サタンとバアル、デビルとデーモンてどう違うの?」
「デビルはギリシャ語でサタンを意味するディアボロスが語源で、サタンそのもの。あるいはアザゼルやルシファーといったキリスト教が出典の悪魔を指す。デーモンはギリシャ語のダイモンが語源。肉体を持たない精霊や鬼神のような存在で、キリスト教以外の神々もこれにあてはまる。仏教や神道の大日如来や天照大神もキリスト教から見ればデーモンだからな」
「へー」
「てんめぇぇぇらァァァっ、おれを、無視、するんじゃ、ねぇぇぇェェェッ!」

 カンバラの血刃が守護の円環に振り下ろされると、白い輝きがくすみ、柏手の残響音もかすかに弱まる。このまま攻撃を受け続ければ結界が破れてしまうことだろう。

「まったりとお話しするのはこいつらを退治してからだな。悪いけど、手を貸してもらう。もう一度こっち側の世界に来てもらうぜ、山内。そうしないと、おまえは禍津御座神(まがつみくらのかみ)に喰われちまうんだ」
「あいかわらず強引だね、最初に会ったときみたい」

 一年前の夏の日、山寺にある墓石の陰からひょっこり現れた紺の姿はいまでも鮮明におぼえている。死に装束のごとき白無地の帷子姿に白狐の面。しかも面を外すと朱唇からは細い青火が呼吸するたびに漏れているという。

「いいか、山内。力を制御しようだなんて思うなよ、力を受け入れろ。けれども流されるな」
「……むずかしい注文だけど、やってみるよ」

 山内くんは紺と肩をならべ、異形の群れへと立ち向かった。

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