ep25 反省
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私は手すりを器用に使って体勢を整える。改めて相手を見ると、戦術予報士のスメラギ・李・ノリエガだった。
若干距離はあったが、彼女の方から酒の臭いが漂ってくる。目元が赤く腫れているのは気のせいではない。
「スメラギさん、こんなときにもお酒ですか?」
「そんなに飲んでないもの。3缶だけよ」
「飲んでるじゃないですか……」
先の作戦では、ガンダム4機の収容中にブリッジを出て行った。それからブリッジに帰ってきて今後の指示を出していたが、ティエリアの理不尽な抗議を受けた。
何より、いつも作戦を立案し、指揮を取っているスメラギさんは私よりもずっと負担を抱えているはずだ。
私は何となく考えていたことを言葉に発していた。
「スメラギさんは、酒だけで心の痛みを薄められますか?」
「なあに、クリス。一緒に飲みたいの?ダメよ。あなた、私と一緒に飲んで潰れたことあるじゃない」
「あれはスメラギさんのペースに合わせちゃったから……ってそうじゃなくて」
スメラギさんは私のテンパりに微笑むと、ゆったりとした口調で答えた。
「お酒だけでどうにかなったら良いんだけどねえ。でも、それだけで世界に満足できていたなら、私はここで戦争根絶を目指してない。私はね、クリス。世界を変えたいけど、弱い人間だから酒で誤魔化してるの」
「そんなことないです!」
私は思わず大きい声を出していた。スメラギさんの目が丸くなっている。
「スメラギさんは弱くなんかないです。だって、お酒の力に頼ってでもここにいるじゃないですか。私なんか、さっき取り乱しちゃって……。私だってマイスターのみんなと同じ立場なのに、思いっきりうろたえちゃって申し訳ないです」
刹那たちは、いつも戦場にいるのに。彼らはガンダムに乗って、任務を果たしている。それは一見難しくなさそうだ。
でも、自分が死ぬ可能性だってある。ガンダムが頑丈だから安全なわけじゃない。現に、アレルヤとティエリアは敵に鹵獲される寸前だった。
スメラギさんは視線を虚空に移して、言葉を口にする。
「確かに、私もクリスもマイスターたちと立場は変わらない。だから戦場にいるという覚悟は必要よ」
「じゃあ、どうすれば良いんですか?」
スメラギは、まだ少しだけ充血した目を笑みで彩る。
「あなたのやるべきことをやるの。それが、みんなが生きるために必要なことだと信じて」
「みんなが生きるための……」
「死ぬのが怖いのはみんな同じだし、恐れてる自分を認めてあげて。その上で、あなたはあなたの仕事を果たすの」
死を恐れても良い。それでも、自分の仕事をする。みんなが生きるために。イオリア・シュヘンベルグの計画
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