Ep5 醜いままで、悪魔のままで
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「魔物よりも、生きている人間のほうが厄介なことがある。リクシア、貴様はこの狭い道で、味方に当てず敵のみに魔法を当てられるのかッ! あとフィオル! 気遣いは無用、オレはこれでやってきた!」
その、有無を言わさぬ空気に。
「……わかったわ。でも、必ず後で合流するから!」
「無理しないでね」
何を言っても無駄だと悟り、二人は来た道を引き返す。
二人は願わずにはいられない。
――どうか、無事でいて――!
「……ほう、仲間を逃がすか。美しいものだな」
それを見つつも、額に禍々しい烙印のある少年が、前の道からやってきた。
アーヴェイは無言で双剣を薙ぐ。少年はひらりとよけると、言った。
「戦闘開始だ」
途端、アーヴェイの中で力が膨れ上がり、心の中で声がする。
『ぎゃははははは! やっとのお呼び!』
『今夜は挽肉パーティーだ!』
アーヴェイの双剣、『アバ=ドン』には、人格があった。快楽的で、享楽的な、狂ったような双子の人格が。普段、アーヴェイはその剣を抜かない。なぜなら。
――抜いたその時点で双子が目覚め、身体を乗っ取られることだって少なくはないからだ――。
今、アーヴェイは戦っている。襲い来る人と双子の意思に。
彼の身に宿した悪魔の血が、血の匂いに狂喜する。
狂いそうな思考の中、意思を保つのは至難の業で。彼の身体は今、悪魔のような異形と化していた。
アーヴェイは、人と悪魔のハーフなのだ。
アバ=ドンが血を求める。悪魔の血脈が彼の思考力を奪う。
彼はこうなるとわかってはいた。けれど、こうでもしないと守れないのだ。
――フィオルとリクシアが戦うには、この敵は強すぎる。
だから。異形と呼ばれたって、化け物と呼ばれたって。
彼には守るべきものがあったから。弟みたいなフィオルと、偶然出会ったリクシア。
アーヴェイは、呟く。
「――オレは、これで、いい」
それを聞いて、烙印の少年は嘲笑を浮かべる。
「悪魔だ! 悪魔が本性を見せた!」
その言葉になんて一切構わず、アーヴェイは烙印の少年に斬りかかる!
悪魔のままで、怪物のままで、醜いままで、異形のままで。
魔物と化した大切な人。悪魔になれば、助けられたのに。
嫌われるのを恐れ、何もできなかった。結局彼の大切な人は、魔物となって人々を襲う。
でも、今は違うから。
「――オレはッ! これでッ! いいッッッ!!」
思いを込めて、振り上げた刃。双の剣がブゥンとうなる。
しかしその刃は、少年の命には届かなかった。
「私のゼロに、なんてことしてくれるの」
彼は熱い感触を腹に感じた。死角から突きだされた剣が、彼の腹を貫いていた。
「貴……様……」
くずおれるアーヴェイ。
美しい女性が烙印
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