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カラミティ・ハーツ 心の魔物
第一章 始まりの戻し旅
Ep2 大召喚師の遺した少女
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〈Ep2 大召喚師の遺した少女〉

 
――人は、心を闇に食われたら、魔物になる――。

「……いったい何で、こんなこと」
 リクシアはぽつりとつぶやいた。白の髪が不安げに揺れる。赤の瞳は混乱を湛え、小さなその全身は震えていた。その顔にはどこか、あの大召喚師リュクシオンの面影がある。彼女はリュクシオンの妹だった。彼女は戦争が始まった際に「危険だから」と国外に逃がされた。故に破滅を免れた。
 リュクシオン・エルフェゴールは召喚した天使を制御しきれずに暴走させ、あれほど大切に思っていたウィンチェバル王国を破滅させたという。直接その目で見たわけではないけれど。人々から話を聞いて、リクシアはその情報を知った。
 リクシアはそれを聞いて、運命のあまりの理不尽さに嘆く。
「おかしいよ……。何で、何で、こうなるの……? 兄さんは、ただ国のためを思って……! こんなの理不尽だよ……!」
 リクシア・エルフェゴール。彼女は、あのリュクシオンの妹。 あの日、あの時。ウィンチェバル王国内にいた人々は皆、死に絶えた。リュクシオンの呼びだした天使によって、敵味方の区別なく皆殺しにされた。
国を守るために、神に願って得た力。しかし彼はその力で、国を滅ぼしてしまった。そして、絶望のあまり、心を闇に食われて、魔物と化してしまったのだ。
「こんなの、おかしいよ……」
 リクシアの口から言葉が漏れる。
「兄さんは、兄さんはただ、国を守れればそれでよかったのよ! こんなこと誰が望んだの? 誰も望んではいない結末に、最悪の結末にどうしてなるのッ!」
 リクシアの両の瞳から流れだしたのは熱い雫。
 彼女は思う。理不尽だ、兄に起こったことは、あまりにも理不尽だと。だから、探そうと思った。魔物と化した大切な兄を、元に戻す方法を。
 魔物と化した人間は元に戻らない、それがこの世界の法則だ。過去の文献を漁れば元に戻った人間の話もあることにはあるが、それは童話や物語のようになって語られていて、真偽は確かではない。そして歴史書や正確性の高い文献に、そんな話は一切出てこない。魔物と化した人間の話は出てくるにもかかわらず。
 リクシアは呟いた。
「魔物は二度と戻らない? そんな法則……なら、私が変えてみせるわ」
 心が闇に食われたら魔物になるのならば。心を光で満たしたら、人間に戻れるのだろうか。
「……生き残ったのは私だけじゃないはず。だから、探すわ。探して兄さんの前に連れてきて、言うんだから」
 あなたはすべてを滅ぼしたわけじゃない。見てみて、ほら。私たちは、生きているよ――と。
 そのためにはまず、情報をもっと集めなければならないなとリクシアは思った。
 と。
 リクシアの耳は悲鳴を捉える。
「わぁぁああああ! 魔物だ、魔物が来た!」
 突如上がった悲鳴に、
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