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カラミティ・ハーツ 心の魔物
第一章 始まりの戻し旅
Ep2 大召喚師の遺した少女
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リクシアにはよくわかる。
 これはデリケートな話題だった。それと気づかずに、リクシアは土足で踏み込んだ。
 この世の中だ、いつ、何があるかはわからない。ほんの些細な理由から、人は魔物になってしまう可能性を秘めている。偶然助けた見知らぬ人間が、魔物になった知り合いや大切な人がいないとは言い切れない。これはリクシアの失言だった。
「ご、ごめんなさい……。あのね、私ね、兄さんをどうしても元に戻したくって」
「戻せるわけがないだろう。今更下らん夢物語をオレに語るな」
 その言葉に、リクシアはカチンときた。アーヴェイの全てを切って捨てるような言葉は、彼女にとって、兄が魔物になってからの自分を全否定されたような気がしたからだ。自分の決意を、自分の思いを、自分の挑戦を、何もかも無かったことにされたような気がしたからだ。
「あのさ! 夢物語、夢物語ってさぁ、自分から何もしようとしないで最初から全否定しないでよッ!」
 返されたのは、冷静な、あまりに冷静な、言葉。
「ならば聞くが、人間は道具や魔法の助けなしで、空を飛ぶことができるのか? できないだろう。魔物を元に戻せないというのは、人間が空を飛べないのと同じくらい当たり前のこと。そんな下らんことにムキになるなんて人生無駄だぜ。そりゃあ全否定もするだろう」
 その声は、どこか彼女を嘲笑うような調子を帯びていた。
「馬鹿にしないでよッ!」
 怒ったリクシアの周囲で風が吹く。
「私のこの思いは、決意は、怒りは、全てすべて本物なんだから。だから私はこの世界の法則を変えてみせるわ、それがどんなに傲岸不遜な思い上がりだとしても。だから黙って見ていなさいよね!」
 リクシアは、燃える赤の瞳でアーヴェイを睨みつけた。
 アーヴェイは呆れた顔をした。その顔の奥には、面白いものでも見るような光がひらめいている。
「何だ、その傲岸不遜な言い方は? 大召喚師の妹だからって、自分が何様だと思っているんだ? その名称も、大召喚師なしでは得られなかったものだろうに。……だがな、面白いじゃないか、大召喚師の妹。オレはあんたの向かう先を見てみたくなった」
 アーヴェイは、笑った。おかしそうに、笑った。
「ハ、ハハ、ハハハ! いいじゃないか、やってみろよ、やってみせろよ。変えられるというのならば、法則を変えて見せろ。それができた暁には、ハーティも元に戻るかもしれないしな……」
 呟きの中に込められたのは、面白がる調子と一つの願い。
 小さく彼はうなずいた。
「オレはやることがなくて暇だった。だからなんだ、折角だから、あんたの夢物語にも付き合ってやろうか、と提案するが、どうだ。その先であんたがもしも魔物を人間に戻すなんて物語を夢ではなく現実にすることができたのならば、それが万人に通用する方法ならば、オレたちの大切な人もきっ
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