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俺様勇者と武闘家日記
第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
盗賊と鍵
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柱の反対側まで来たとたん、少し長い銀色の髪を後ろに縛った男の人がうつぶせに倒れている姿が目に飛び込んできた。
「あ、あの、大丈夫ですか!?」
 私はあわてて銀髪の人を揺り起こした。どうやらお腹が減っているらしく、私の呼びかけに答えるかのようにお腹の虫が鳴っている。
 やがて私の声かけに気づいたのか、ぼんやりとした目でこちらの方を向いた。
「ここは……天国か?」
 開口一番放った彼の台詞は、割と余裕が見えた。
「あれ……? あんた誰?」
 顔を向くたび、細い銀糸のような前髪がさらさらと揺れる。顔つきからして私より二つ三つ年上だろうか? やや切れ長の目で細面な顔はクールな印象を与えるが、今は空腹のせいか、げっそりとしている。
「私はミオ。あっちにいるのがシーラ。もしかしてあなた、ここの塔に住んでるの?」
 もしそうなら私たちは不法侵入者と言うことになる。まあ、自分の家で空腹で倒れてるってのも変な話だけど。
「うう……。住んでるといえば住んでるが……。それよりメシ……」
「メシったって……今のところ携帯食ぐらいしかないし、それでもいいんならあげるけど……」
 私はリュックの中から残っていた携帯食を出して彼に食べさせようとした。すると、
「なにやってるんだ、お前らは」
 見上げると、不機嫌な顔をしたユウリが仁王立ちで私たちを見下ろしていた。
「リーダーであるこの俺をほったらかしにするなんて、いい根性してるな、お前ら」
「べ、別にほったらかしにしてるわけじゃないよ! 私やシーラもこの塔を調べてただけだもん」
「罠に容易く引っかかるような役立たずがそんな高度な真似できるわけないだろ。いいか? 俺の許可なく勝手な行動をするな。わかったか!」
 散々な言われようである。その言葉に、すっかり反論する気力も失われてしまった。
 すると、いきなり銀髪の人が起き上がった。
「ふぃーっ。ご馳走さん。いやー、腹減ってるからどんなものでも食える食える」
 どうやらユウリとのやり取りの間に、私が持っていた携帯食をこっそりとって食べてたらしい。
「携帯食ってそんなに美味くないんだな。でもおかげで3日間は生きながらえたぜ。サンキューな」
 そういって彼は、素直な感想とともに、さわやかな笑顔を見せた。
 逆にユウリはいっそう不機嫌な顔で銀髪の人をにらみつけている。けれど銀髪の人はそれにまったく気づかないのか、多少ふらつかせながらも立ち上がり、
「くっそー。あのクソジジイ、今度こそギャフンと言わせてやる!!」
 いきなり大声を上げたかと思うと、そのまま中央の建物に向かってダッシュした。
 中央の建物の正面には窓もなく、代わりに大きく赤い扉が構えており、彼はその扉の前でもそもそと何かをやっている。
「あーくそっ!! やっぱり開かねー!!
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