第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
盗賊と鍵
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いいものを」
最初から最後まで完全に悪役口調のユウリだったが、おじいさんは完全に彼のことを本物の勇者だと信じ、目を輝かせている。
いや別に、ユウリが本物の勇者だってわかってるんだけどさ。どうもあの口調と無愛想さを見てると疑問に思うんだよね。本人の前では絶対いえないけど。
「ちょっと待てよ!! その盗賊の鍵は、俺が一人前の盗賊になったらくれるっていったじゃねーかよ!!」
ただ一人異を唱えているのは、銀髪君。おじいさんはちょっと困った様子で、
「ああ、すまんナギ。お前との約束も忘れたわけじゃないぞ。じゃが、わしとの約束と世界の平和を秤にかけたら、どちらを優先すべきかおぬしにわからぬことはなかろう。勇者の手助けになると思って、あきらめるんじゃよ」
おじいさんはやさしくナギさんをなだめたつもりだったが、ナギさんにとってはその行為は逆効果だったみたいで、より険しい目でおじいさんを怒鳴り散らした。
「ふざけんなよ!! 約束破ったくせに、何勝手なこと抜かしてんだよ!! あの鍵をもらうのに今までどれだけ苦労したと思ってんだよ!! オレは絶対そいつを勇者だって認めねえからな!!」
「ふん。だったら実力で取り返せばいいだろ」
「ち……、ちくしょー! ふざけたまねしやがって!!」
そういってナギさんは腰につけていたナイフを抜き、ユウリに襲い掛かった。
だが、ユウリは必要最低限の動作でその攻撃をよける。まるで飛び回ってるハエをうっとうしげに払うように。
「くそっ、くそっ!!」
「ふっ、この程度なら、お前が一人前の盗賊になるまでに俺は魔王を倒しているだろうな」
ユウリの発言に、ナギさんはさらに攻撃を増やしていく。だが、それもことごとくかわされていく。
なんか、ちょっとかわいそうになってきたなぁ……。
そう思い、私はユウリを止めようと彼に近づこうとした。そのとき。
「ちくしょ、ならこれはどうだ!!」
ぼぅんっ!!
急にユウリたちの姿が、煙に包まれた。
「煙玉!?」
ナギさんが放った煙玉は、おじいさんの部屋をあっという間に包み込んでしまった。当然視界はまったく見えない。
「なんじゃあのバカは!! こんなところで煙玉なんぞ使いおって!!」
おじいさんの言うとおり、四方を壁で囲まれた窓ひとつない部屋に煙玉なんて使ったら、視界ゼロになるのはもちろん、煙で喉と目まで痛くなるに決まってる。案の定、私も涙がぼろぼろ出てきて、思い切り咳き込みまくった。
「ミオちん、大丈夫?」
煙で何もかも見えない中、なぜかシーラは普通の口調で私に言った。
「だ、だいじょぶ……。し、シーラはだい、じょぶなの?」
「あたしは平気だよ。こーゆーの慣れてるから」
慣れてるって、どういうことなんだろう。気になるけど今は、それどころじゃなかった
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