第1部
アリアハン〜誘いの洞窟
盗賊と鍵
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! いやでもここをこうすれば……」
おそらくあそこの扉には鍵がかかっており、彼はその鍵を開けようとしてるのだろう。わかったところで、それをやっている理由がわからない。
それを見てなにかを察したユウリが、ため息混じりに呟いた。
「無駄な時間を過ごしたな。行くぞ」
「で、でももしかしたらあの建物の中に盗賊の鍵があるかもしれないんじゃない?」
私は何故か彼が扉を開けるのを半ば期待していた。
「お前のことだから気づかなかったか。この下の階にあるもうひとつの階段の位置が、あの建物の真下だと言うことに」
「え!?」
じゃ、じゃあもしかしてその階段から上に上がれば、この建物の中に行けるってこと?
「あれ? でもそれじゃあの人は何でわざわざ鍵がかかっている扉を開けようとしてるんだろう?」
「そんなこと知るか。これ以上無駄な時間と労力を浪費させるな。行くぞ」
確かにこれ以上考えても意味がないのかもしれない。私は詮索するのをやめ、塔の端―――一歩でも足を踏み外したら落ちてしまいそうなぐらいのぎりぎりの場所でタップダンスの練習をしているシーラをあわてて呼び戻し、下の階へと降りた。
いったいあの人はなんだったんだろう。一瞬疑問がわいたが、ユウリの急かす声に気を取られ、すぐに忘れてしまった。
そして、もうひとつの階段はと言うと。
「なんじゃ!? お前さんがた!!?? どこから入ってきた!?」
上った先には小さな小屋ほどのスペースの部屋があり、中に白いひげを蓄えた老人が、驚きを隠せないまま立っていた。
おじいさんのほうも驚いたと思うけど、私たちもそこにおじいさんがいたことにかなり驚いた。
「どこって……そこの階段から来たんですけど……」
「むう。ノリの悪い娘じゃの」
私の答えに、おじいさんはいまいち納得行かない顔で反応した。
「おいじじい。盗賊の鍵というものを持っているか? もし持っていたら俺によこせ」
「若者の癖にずいぶん横柄な態度じゃの。まったく近頃の若いもんは……」
とても勇者が吐くとは思えない台詞を堂々とした口調で言うユウリ。おじいさんも思わず本音を漏らした。
「む!? そこの剣士、おぬし、もしかして勇者か?」
「ほう? 老いぼれの割にはまともな目を持っているな。まあ、そうでなくとも、この俺からにじみ出る勇者のオーラがあまりにもすごすぎるせいで、身分を隠したくても隠し切れないのだがな」
しかしおじいさんは、ユウリの口上などまったく聞いてないようだった。
「まさか、半分信じちゃおらんかったが、本当にやってくるとはの……」
「おじいさん、いったいどうしちゃったんだろ」
「おいじじい、聞いてるのか?」
発言を無視されたせいか、ユウリが珍しく戸惑った様子でおじいさんにたずねる。すると
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