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カラミティ・ハーツ 心の魔物
プロローグ 心の魔物
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して見つけた、とある天使の召喚呪文。リュクシオンしか見つけられず、リュクシオンにしか「縛りの言葉」がわからなかった。それの発動には、長い長い準備が要った。やがてリュクシオンが寝る間も惜しんで準備し続けた術の完成が、迫る。リュクシオンは強く思った。
――国を守りたい。思いはただ、それだけなんだ。
 そして。
 太陽が、月に食われた。
 日食だ。しかも皆既日食だ。昼の雪原はあっという間に闇に閉ざされ、凍える寒さが人々を打つ。不安げな声がざわめきとなって雪原を揺らしていく。
「――今だ!」
 リュクシオンは声を上げた。突き出した手に、集まる魔力。皆の視線が、彼に集中する。
「光の彼方、天空の向こう、万物に公平なる平等の母! ここに我、リュクシオン・エルフェゴールはあなたを呼ぶ。我に力を貸し給(たま)え。現れよ――日食の熾天使、ヴヴェルテューレ!」
 神の域にさえ達したとされる究極の天使が今、リュクシオンの「仕掛け」に導かれ、彼の敵を滅ぼすため、外へと飛び出す。
 が。

 崩壊は、一瞬だった。

「あれ……嘘だろ……?」
 白い、白い光が視界を埋め尽くした。天使はこの世に顕現した。そこまでは構わない。だとしても。
 光が晴れたとき、リュクシオンは天使のもたらした結果に身も心も凍りついた。
 辺りに転がるは死屍累々。光に貫かれて焼き焦がされて。死んでいるのは敵ばかりではなくて、リュクシオンのよく知った顔も紛れている。見知った顔。あれは魔道師のアミーだ。あっちは同僚であり、友人であるルーク。そして彼は、さらに驚くべき人物の死体を見る。その人物とは、
――さっきまで隣にいた、リュクシオンの王様。
 敵味方の区別なく、みんなみんな死んでいた。リュクシオン以外皆殺しだった。死んだその目には恐怖の色があった。恐怖を感じる暇はあったということだ。
 リュクシオンは、動かない、動けない。ただただ呆然として、己のもたらした惨状を眺めていた。彼の全ての思考が停止した。先程まで一万四千もの人間が戦っていた戦場で、立っているのはリュクシオンだけだった。
 中に浮かぶ日食の熾天使が、これで良かったのだろうとリュクシオンに笑いかける。
「……違うよ、ヴヴェルテューレ」
 リュクシオンは、放心したままで呟いた。
「僕が望んだのは、僕があなたに願ったのは、こんな、こんな結末じゃないッ!」
 国が、滅んだ。守ろうと、彼があれほど力を尽くした国が。リュクシオンの王国が。守りたかった全てが。王様が、友人が、死んだ。滅び、壊れ、崩れ落ちた。
 リュクシオンの、積み重ねてきたすべてが。
 存在意義が。
「……あ……嗚呼……ぁぁぁぁ嗚呼ああ嗚呼あ!」
 リュクシオンは地にくずおれ、獣のように咆哮を上げる。
 天使は、破壊神だった。
 確かに相手も全
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