先はどこに
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だろう。だが、それをこなしているのが配属一週間の新人であることを、ただ優秀だと一言で片づけてもいいものだろうかと。とはいえ、訓練を一月後に向かえる忙しい時期では、誰もが仕事を抱えて停滞していた状況であり、それを改善してくれたのは間違いない。
ただ優秀では片づけられない怖さがあったが、それを表情に出すことはなかった。
深くは悩まない性格というのはパトリチェフの長所であるかもしれなかったが。
だが、パトリチェフを悩ましたのは、その後のことだった。
仕事が進み始めてしばらく経って、アレスがパトリチェフに意見に来た。
睨むような目つきを向けられれば、一瞬であるがどきりとした。
「こちらの仕事も落ち着きましたので、他の部署へ訓練の調整に行きたいのですが」
「訓練の計画については、詳細な情報を各作戦参謀と艦隊司令部に送っているし、来月には会議を予定している。わざわざ行く必要はないんじゃないか?」
「それを知って共通の認識があるのは、現在のところ上層部だけでしょう。もう少し広く情報を共有する必要があると、考えます」
それにパトリチェフは渋い顔をする。
アレスが言わんとしていることは理解できる。
だが。
「あまり下まで伝達するとどこかで情報が洩れる恐れがある。上もいい顔はしないだろう」
「それは理解できます。なら、他の作戦参謀とは話をしても良いのではないかと。先日、作戦計画を作戦参謀から頂きましたが、先週のものと大きく変わっていました。訓練も近づけば簡単には変更もできません。早めに知っておいた方がいいかと思います」
そう強く言われれば、パトリチェフが否定をする理由もない。
了解したと頷けば、敬礼をもって踵を返した。
そして、足を止める。
「あ。作戦計画に関係のない雑談程度なら、各艦隊とも話して構いませんか」
「え。ああ、それなら問題はない」
「ありがとうございます」
さらっといわれた言葉に、思わず許可を出した。
本来ならばよくないことなのであろうが、雑談くらいならば誰もがしていることだと。
そうして。
「また、マクワイルド大尉がいないのだけれども……」
「あ。大尉なら第五艦隊の分艦隊を見に行くとおっしゃっていました」
「またか。昨日は第八艦隊の旗艦に行くといっていたじゃないか」
「ええ。その後で作戦参謀の方へ書類を出しに行くとおっしゃっていました。あ、頼まれていた書類は机の上においているとのことです。それとこちらが、訓練時の補給の修正案です。マクワイルド大尉には見ていただいています」
差し出された書類を受け取って、パトリチェフは大きなため息を吐いた。
決してさぼっているわけではないのだろう。
少なくとも頼んだ仕事は片づけているし、それ以外にも部下の仕事の
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