デート 後編
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な人は嫌ですよぉー』
『そうですよねえ。男ならガッといかないとねえ』
「・・・」
士道が黙っていると、不自然なほど周囲にカップルが増え始めた。しかも皆仲睦まじく手を繋いで、時折「手を繋ぐのっていいよね!」やら、「心が通じ合う感じがするね!」やらと、わざとらしく言ってくる。
士道は軽い目眩のようなものを感じて額に手を当てた。―――これは、やっぱり、そういうことだろうか。
大きく息を吐いて、暫しの後。士道はティッシュをポケットに仕舞うと、動悸を抑えながら十香に目を向けた。
「な、なあ、十香………」
「ん、何だ?」
十香が不思議そうに首を傾げる。士道はごくりと唾液を飲み込んでから手を前に出した。
「その、手・・・繋がないか?」
「手を?何故だ?」
まるで悪気なく、純粋な疑問符を浮かべながら十香が問うてくる。何かもう、ただ拒絶されるより恥ずかしかった。
「・・・そうだな。何でだろうな」
実際、説明出来るようなものでもない。士道は目を泳がせながら手を引っ込め―――
「ん」
―――ようとしたところで、十香が、士道の手を取った。
「・・・っ」
「ぬ?何だその顔は。シドーが繋ごうと言ったのだろう」
「あ、ああ」
士道は軽く頭を振ってから、道を歩き出す。
「ん、悪くないな、これも」
そう言って十香が笑い、きゅっと手を握る力を少しだけ強くした。
「・・・っ、そ、そうだな」
何かもう、小さくて柔らかくて少し士道よりも体温の低い、ひんやりとした手を触っていると、自然と顔が赤くなるのが自覚出来た。出来るだけ感触に気がいかないよう、別のことを考えながら歩いていく。
どれくらい進んだ頃だろうか、進行方向上に、工事中を示す黄色と黒の立て看板が見えた。ヘルメットを被った男達が、齷齪と働いている。
「っと・・・ここ通れないのか。じゃ仕方ない、こっちに・・・」
士道が足の向きを変え、右側に向くと、今度はその通路に立ち入り禁止の看板が置かれた。
「あ?」
不審に思いながらも、仕方なく元来た道を戻ろうとする。だが今度は、今まで士道達が歩いてきた道が、看板で塞がれた。
「・・・・」
幾らなんでも不自然に過ぎる。士道は目を凝らして作業員の顔を睨めてみた。案の定、その内数名の顔に見覚えがあった。
<フラクシナス>クルーだ。
士道は無言のまま、高台の方に向かう、左手に延びた通路に目をやった。通れる道はそこしかなかったのだ。
「・・・こっちに行けってことかね」
「ぬ?どうしたシドー」
「や、何でも。・・・取り敢
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