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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 2
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範が「……どした?」と首を傾げる。
 不思議そうな、怪訝そうな、どこか心配そうな表情の師範を。
 しかし私は、正面から見つめ返すことができなかった。






 vol.3 【その頃、アルスエルナ上空】

 鼠色(ねずみいろ)の雪雲がちらほらと漂っている、山頂より遥かに高い宙空。
 ここに、陽光が眩しい真っ青な空を背負って(かけ)る小鳥が一羽、居る。
 真っ白な体毛に覆われたその小鳥は、乳白色の(くちばし)をカチカチ鳴らし。
 雪原を思わせる銀色の瞳に激しい怒りを(たぎ)らせながら羽ばたいていた。

 いや、羽ばたいているというよりは、翼で風を殴打していた。
 翼が上下するたび、薄い桃色に光る羽根が散らばり、大地へ落ちていく。

 その様には、『空を舞う』といった優雅さなどは一切なく。
 行く先々でぶつかる相手全員に喧嘩を売っているような粗暴さしかない。
 愛らしい筈のさえずりも、ひたすらにけたたましく、やたらと攻撃的だ。
 それも、事情を知れば仕方がないこと、だったのかも知れない。

 何故なら、小鳥な彼女アオイデーは。
 『音』で生物としての気配を消していたが為に、ロザリアに感知されず。
 たまたまフィレスやソレスタから離れた枝でうたた寝していたせいで。
 たった一柱(ひとり)だけ、エルフの里に取り残されてしまったからだ。

 エルフ族やレゾネクトとは敵対関係にあった堕天使(めがみ)の身。
 場所が場所だけに潜んでいたことを自業自得とは言えず、納得もできず。
 移動する直前にでもフィレスかソレスタが彼女の存在を指摘してくれれば一行の輪に加われたのに、二人はそれをしなかった。

 結果、アオイデーは一柱(ひとり)淋しく空の上。
 一行の会話から行き先だけは判明しているので、そこへ向かい移動中だ。
 
 せっかく人前に姿を現してやったというのに。
 何故か今も、たった一柱(ひとり)で。
 ソレスタ達は、レゾネクトが使う『空間』の力で楽をしたのに。
 アオイデーは本物の鳥よろしく、小さな翼でバタバタ、バタバタと。

 置いていかれたと理解した瞬間から、胸で沸き立つこの想い(怒り)
 特に、絶対分かっていて、わざと何も言わなかったソレスタへ向けて。
 アオイデーは誓いを立てた。

(合流したら、絶対にしばき倒してやる……ッ??)




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