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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 2
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い忘れてましたが、お茶を淹れる際には、縦長のポットを使ってください! 丸っこいほうは、私が個人的に使っている物なので!」

 首をひねったところで、なにやら慌てた様子のミートリッテさんが物凄い勢いで駆け込んできた。
 くらげポットの横に並んでいた、至って普通な造りのポットを取り出し。
 調理台の上に置いてくれる。

「……このくらげは、王都で流行しているのですか?」
「え?」
「いえ、別の場所でも同じ造形の物を見かけたので」

 では! と言って立ち去ろうとしたミートリッテさんが振り返り。
 別の場所? と呟いた後、両手をポン! と叩いて、にっこり笑った。

「そのくらげ型の製品は、私の故郷で生まれて放置されたマスコットを元に作っている私物でして。流行してくれるなら、それはそれで嬉しいですが。私が神職に就いている以上、残念ながらこれらは商売道具にはできません。教会のバザーに出品する程度なら許されているんですけどね。今のところ、出品したことはありません。多分、フィレスさんが見たと仰っているのは、大きさ違いのぬいぐるみ二体や、燭台のような物ではありませんか?」
「ええ、そうです」
「ならばそれは、神父への就任祝いとして私がお父様に差し上げた物です」
「……………『お父様』?」
「はい」

 師範が預かっている教会にあった、()()ぬいぐるみ二体と燭台は。
 ミートリッテさんが、『お父様』に、神父への就任祝いとして贈った物。

 ミートリッテさんが。
 『お父様』に?

「北の教会の神父は、二人しか居なかったと思うのですが」

 ミートリッテさんは、どう見ても二十代の女性だ。
 目が大きいから、頑張れば化粧次第で十代後半にも見えるかも知れない。
 それでも、アーレストさんや三十代前半の師範では、年齢が合わない。
 事実から無理矢理つじつまを合わせようとすれば、覆しようがない立派な犯罪者が出来上がる。
 あまり考えたくない方向性、なのだが。

「はい。現在あの教会に派遣している神父は()()で間違いありません」

 他ならぬミートリッテさんに、聖職者の犯罪行為を示唆(しさ)されてしまった。

「…………失礼を重々承知の上で、念の為にお尋ねしたいのですが」
「ふふ。意地悪は良くありませんね。あの鬼畜神父の肉親と間違われるのは大変心外ですのでお答えしますが、『お父様』は今、次期大司教の執務室にいらっしゃいますよ」

 柔らかく微笑む自身の口元に手を当てて。
 ミートリッテさんは浴室へと去っていった。

「……師範の……『娘』?」

 なんだかよく分からない衝撃を受けて立ち尽くす、私を残して。



 その後。

 お茶を持っていった私を見て、師
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