花言葉
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でもない。僕は――復讐の、クローバーなんだ」
彼は叫んだ。
「犯人よ、姿を見せろッ!」
だが今更、姿を現すような不用心な下手人もいないだろう。
誰も答えないと見るとクローバーは一瞬でカンパニュラとの距離を詰め、彼が護身用に持ち歩いていた剣をその腰から奪い去った。
「な、何をするッ!」
「決まっているだろう、復讐さ」
犯人が姿を現さないのならば、自分で探しだして仕留めればいいだけのこと。
幸せのクローバーは復讐に染まり、人々の前から姿を消した。
◆
「沈丁花の命を奪ったことへの断罪を受けよ! 我こそは、復讐のクローバーなりッ!」
つるぎが銀色に輝いて、男の身体を刺し貫いた。
それから数年後、クローバーはついにダフネを殺した相手を見つけ出し、今まさに復讐を遂げんとしていた。
クローバーは荒い息をして、そのまま大地に横たわる。
彼の身体にもまた、大きな傷があった。彼は相手と互角の戦いを繰り広げ、辛うじて勝ったのだ。豊かな森が血で赤く染まっていく。彼は己の死を覚悟し、そのまま意識を手放した。
それを見つけたのは。
「おや? 彼はいつしかの……!」
カンパニュラ。誠実と節操が偶然その森にやって来て彼を救った。
その後目を覚ました彼はカンパニュラを見、自分が生きていることを確認して小さく呟いた。
「……成し得た」
そう呟いて、彼は再び意識を失った。
長い時を経て彼の復讐は、クローバーの復讐は。
――終わったのだ。
◆
そしてそれから何年も経ち、またあの季節がやってくる。
クローバーは今や復讐のクローバーではないが、もう幸運と約束にも戻れない。
永遠と不滅のダフネは死んで、復讐のクローバーは復讐を果たした。
ダフネは花言葉に逆らって、クローバーは花言葉を忠実に実行した。
いっそ逆だったら、どんなに幸せだろうかと彼女のいない世界で彼は思った。永遠と不滅が叶って、復讐が起こらなかったら、と。
その窓際に置かれた花瓶に入っているのは沈丁花の花。ダフネの、花。
永遠なんて、存在しなかったんだ。
彼は、その花を見るたびに思うのだ。
――ダフネ、ダフネ。
君は。
……どうして、死んでしまったのだろうか――?
誰か教えてくれよ。
◆ ◆ ◆
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