暁 〜小説投稿サイト〜
戦国時代に転生したら春秋戦国時代だった件
第2章 項羽と劉邦、あと田忠 〜虞兮虞兮、奈若何〜
第5話 項羽ジェノサイド
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
に、項羽の首を取って、咸陽脱出の時間稼ぎをするのが、田忠の作戦だった。


「項羽よ、どこだ!! いるならでてこい!! 正々堂々勝負しろ!」

「はーーはっはっは、俺が項羽だ! お前が仙人か! 面白い! 叩き切ってその肉を食ってやろう!!」


 まったく慌てた素振りをみせず、豪快に笑いながら女傑が登場した。項羽である。
 スラリとした長身の野性味あふれる女性である。筋肉ゴリラを想像していた田忠は意外そうな顔をしたあと、驚愕した。


「ん? 何を驚いてんだ? まさか、今更びびってんじゃねえだろうな?」


 隙をついて切りかかる項羽を、何とか錫杖で受け止めた。


「くっ、予想外だ。奥の手だが仕方ない……」

「何をごちゃごちゃ言ってやがる! お前は強いが俺の敵じゃねえな!」


 数合打ち合わせるが、田忠が押され気味だった。そのとき、田忠が叫んだ。


「界王拳!!」

「なにっ!?」


 突如、田忠の気が爆発的に高まると、今までの劣勢が嘘かのように項羽と、互角に打ち合い始めた。
 大気を震わせ大地に亀裂が走る。
 彼らの周囲ではいつの間にか戦いが止み、その行方を両軍の兵士が固唾をのんで見守っていた。
 やがて、経験の差だろうか、田忠が徐々に項羽を押していく。
 項羽の顔に焦りが見え始めたころ、老人が現れた。


「そこまでにせよ」


 項羽軍を出奔したはずの范増だった。
 そのそばには、喉元に刃をつきつけられた司馬欣と董翳がいる。


「二人の命が惜しくば降れ」


 田忠の顔に苦悶が走る。だが、項羽は意外な行動をとった。


「何をしている范増!! 俺の神聖な決闘を汚すつもりか!!!」


「ほっほっほ、老い先短いわしから、不出来な豎子(じゅし)への最後の手向けよ。婦人の仁に感化されてはならんと言ったはずだ。真に天下が取りたくば、わしの言うことを聞け」


 結局、項羽は首を縦には降らなかった。それどころか、義に反する、と范増を一喝した。
 しかし、項羽軍は、すでに混乱から立ち直りつつある。潮時であった。
 もはや田忠に司馬欣と董翳を助ける余裕はなかったのである。


「秦を……頼みます!!」
「小僧、あとは任せた!」


 わが身を顧みず田忠へと思いを託す二人を背後に、撤退した。目に涙を浮かべながら、逃げたのだ。
 田忠にとって初めての敗北だった。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ