第2章 項羽と劉邦、あと田忠 〜虞兮虞兮、奈若何〜
第5話 項羽ジェノサイド
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れようである。
信じがたいが、僅かな生き残りから聞き取った話だ。事実だろう。
くそ、項羽軍を襲撃したいが、得られた情報から中止した。
章邯から異論が出たが、却下だ。
項羽軍は恐ろしく強い上に、いまや数も俺たちより多い。
そして、よしんば勝ったとしても、他にも咸陽を目指す軍勢がいるのだ。
特に、劉邦とかいうやつの軍の進撃速度が目覚ましい。
劉邦……聞いたこともない名前だ。ただの農民だったらしいのだが。
なんでそんなやつが大軍を率いているんだ?
しかし、民を救うにあたって一番の難題は、秦の上層部だ。
こいつらを排除しないとならんのだが、章邯はクーデターを望まないだろうな。
だから、機を伺うのだ。散っていった兵士たちのためにも。
●月&日
司馬欣と董翳は無事らしい。
紆余曲折あったが、ともに戦った戦友だ。
生きていてくれて素直に嬉しい。章邯たちもうれしそうだ。
だが、このあとどうなるか……率いる兵のいない敗残の将軍、か。
利用法は色々と思いつくが、項羽がどうするつもりなのか不明だ。
焦るな、彼らを助けるためにも、いまはじっと機をうかがおう。
●月#日
俺たちが項羽を憎むように、項羽も俺たちを憎んでいる。
例え、残り三家族になろうと、秦を滅ぼすのは楚であるべし。
そういって死んだ楚の人間がいたそうだ。
それほど楚の秦への恨みは凄まじい。
単にライバルだっただけじゃない。秦は、色々と酷い仕打ちをしてしまったんだ。
苦役と重税だけじゃない。
たとえば、楚人が信仰する霊峰をお姫様が焼き討ちして禿山にしてしまったとかね。
だが、俺だって楚、というよりも項羽が憎くて仕方がない。
叔父の項梁を敗死させた腹いせに、かつて俺たちが拠点にしていた定陶城の住民を皆殺しにしている。
それだけじゃない。
激しく抵抗した城の兵士は、腹いせに皆殺し。
すぐに降伏した城の兵士は、弱くて味方にしても役に立たないからと皆殺し。
……やつの乱暴狼藉は目に余る。必ずや俺の手で引導を渡してくれよう。
□月&日
劉邦軍が咸陽に入場した。一番乗りはダークホース劉邦だった。
もし咸陽で略奪を行うのなら、襲撃をしようと思ったが、穏当な統治をしている。
潜り込ませた部下によると、劉邦は「みんなが笑顔になれる世界を目指す」とか言っている不思議ちゃんだそうだ。
だが、圧倒的なカリスマを感じたとも言っている。
とはいえ、さすがに皇帝や趙高といった佞臣たちは皆殺しにされた。
お姫様には申し訳ないけれど、スカッとしたぜ。
お姫様の孫だけは生かしてもらったのだから、それで十分だ。
とうとうわずか15年にして秦は滅んだのである。
$月%日
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