純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート
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う非常時に、部外者から見えない秘密の通路が在るのは助かる。の、だけど。
「……あの、プリシラ?」
「なによ」
「いえ、その……それだけ、ですか?」
「何が?」
「無断で出歩くな、だけで良いのかな、と」
「………………虐められたいの?」
「滅相もありません。」
捩じ切れてもおかしくない勢いで頭を振る。
あ、ちょっと目眩がした。
「……あのね、クロちゃん。私はこれでも、事情を知らないクセに知ったかぶりの仮面を付けて善人気取りの風潮に乗って「悪い事をしたっぽい人達」の話も聴かずに一方的に糾弾するような、そんな脳無しではないつもりよ。私はまだ、一番知らなきゃいけない核心部分を把握してないの。だから、今、此処で、「助けを求めて来ただけの」貴方達を突き回して遊ぶつもりは毛頭無いわ」
「っ!」
腰を屈めて顔を覗き込んでくるプリシラの言葉に息を呑む。
私が知る普段の振る舞いの所為で失念していたが、彼女は聖職者だ。助けを求める者には何処までも寛大な女性。
対する私の、なんと礼に欠いた言動か。
貴女は協力の見返りとして他人を弄ぶ人種だった筈では……などと。本人を前にしてなんたる侮辱。
「すみま」
「まぁでも、そんなに期待してたんなら放置するのも可哀想だし。収拾の目処が付いた後でゆっくりじっくりたっぷり、心が砕けるまで遊んであげるわね?」
「すみませんすみません本当にすみません失言でした。心よりお詫び申し上げると共に遊びのほうは謹んでお断りさせていただきたく」
「クーローちゃーん?」
背中が反り気味な私の前頭部に、
「は…… い? え?」
プリシラの唇が軽く触れる。
きょとんとする私の前で、彼女は
「お帰りなさい」
何年経っても変わらない、無邪気そのものな笑顔を披露してくれた。
「…………ただいま、戻りました」
ほんのり苦味を混ぜた笑顔を返すと、プリシラはにっこりと目を細めて上体を起こし、ミートリッテさんが開いて待っている扉を指し示す。
「……後で、お話します。今度こそ包み隠さず、私が経験してきた一部始終を」
ロザリアを落としてしまわないよう慎重に立ち上がり、敬愛すべき元上司に軽く頭を下げる。
「ええ。ちゃんと待っているわよ、臆病者さん」
ひらひらと手を振って見送ってくれる彼女を背に、再度苦笑いが込み上げる。
この世界の女性が逞しいのは、貴女の影響でしょうかね? エルネクト。
「今更、知られて嫌われるのが怖かった……なんて。自分が一番驚きです」
「はい?」
私の呟きを拾ったミートリッテさんが、小首を傾げて私を見上げる。
「いえ。なんでもありません」
罰を与えられる事に甘えようとしていた自分。
何かを察して
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