第一章
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アンデルセンと少女
フランツ=クリスチャン=アンデルセンは女性とは縁がないと思われていた、それである日彼の知人がある場所に連れて行くと話した。
「娼館だがね」
「娼館!?」
そう聞いてだ、アンデルセンはその小さい目を瞬時に曇らせた。
「僕をそこにかい」
「うん、君も女性は嫌いではないね」
「嫌いではないよ、いや」
むしろとだ、アンデルセンはその知人に素直に話した。
「僕は何というかね」
「何というか?」
「僕の恋愛は成就しないんじゃないかってね」
その小さな目が印象的な顔で言うのだった、見れば鼻は高く面長で首がやけに長い。何処か鳥を思わせる顔と言えるだろうか。
「思っていてね」
「女性はなんだ」
「嫌いではないよ」
このことは否定した。
「そうだよ、けれどね」
「女性との恋愛については」
「そう思っているんだ」
こう友人に話した、だが友人はそのアンデルセンに笑って話した。
「それは恋愛のことじゃないか、僕が今から君を案内する場所は違うよ」
「娼館だというんだね」
「そうさ、いい店だよ」
数ある娼館の中でもというのだ。
「だからね」
「今からその娼館に行ってなんだ」
「そう、そしてね」
「女の子と遊べばいいというんだね」
「恋愛とそうした遊びは別さ」
友人はアンデルセンに笑ったままこうも話した。
「だからだよ」
「今からだね」
「娼館に行こう」
「僕への好意は嬉しいよ、けれどね」
アンデルセンはその目に悲しい、そうしたものを含ませて友人に返した。
「僕は女性とそうした関係を持つことは」
「嫌なのかい?」
「それは結婚した人とだけだよ」
真面目な顔での言葉だった、悲しさは目に留まったままだ。
「するべきであってね」
「娼館に行って娼婦の娘を抱くことは」
「どうかと思うんだ」
「いやいや、それはあまりにも古いそれも碌に守られていない道徳だよ」
友人はアンデルセンによく言われる言葉で返した、所謂キリスト教のあまりにも厳し過ぎる倫理観だというのだ。
「じゃあ何故娼館がこの世にあるのか」
「楽しむ人がいるからだね」
「そうだよ、世の中にね」
「だからというんだね」
「そうした店に行くのは特に悪いことじゃない」
娼館を知っていて楽しんだことのある者の言葉だった。
「だからだよ」
「僕もというんだね」
「そう、一緒に行こう」
「そうして楽しめというんだね」
「そうだよ」
まさにという返事だった。
「ではいいね」
「しかし僕は」
アンデルセンはしきりに渋った、彼は娼館にはどうしても行きたくなかった。だが生来あまり気が強くなく押しに弱い性格で。
不本意も甚だしいが娼館に入った、友人はそこに入ると店の親父
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