第一章
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卍の家紋
ハンス=シュターゼンはドイツのハンブルグ出身である。彼は幼い頃よりナチスのことを聞いていた。その聞くことはドイツでは普通だった。
「ナチスは悪い奴等だったんだね」
「ああ、とてもな」
「あんな悪い奴等いなかったのよ」
両親は家庭でよく彼に言っていた。
「戦争をして弾圧をして言論統制をしてな」
「大勢の人達を殺したのよ」
「あんな酷い奴等はいなかった」
「邪悪そのものだったのよ」
「だからナチスにまつわるものはどれも駄目なんだ」
「あの軍服もハーケンクロイツもね」
「ハーケンクロイツってあれだよね」
子供の頃のシュターゼンはあどけない顔でたまたま読んだ絵本に載っていたその奇妙なマークについて言った。
「鍵のある十字だね」
「あれは絶対に駄目だぞ」
「書くのも飾るのもね」
「ナチスの真似は全部駄目だがな」
「あれも駄目よ」
「ハーケンクロイツはナチスの象徴だ」
「言うなら悪の象徴よ」
そう言うべきものだというのだ。
「だから飾ったら駄目だ」
「褒めることもしたら駄目よ」
「わかったよ、僕ハーケンクロイツを飾ったり褒めたりしないよ」
まだ幼いシュターゼンは心からこのことを誓った、彼は家庭だけでなく学校でもそう教わってだった。
成長していき鉄道会社に就職し駅員となって働いた、彼の勤務ぶりは真面目であり生活もそうだった。
結婚して子供を持って堅実な人生を送った、趣味は読書と犬の散歩そしてブログの更新それに旅行だった。彼はよく勤務の合間に勤めている駅の部下達に言っていた。
「難民の問題は複雑だがナチスは勘弁して欲しいものだ」
「ああした極端な民族主義はですね」
「そして排外主義は」
「ああ、ナチスは酷い奴等だった」
歴史にある彼等はというのだ。
「民族主義に全体主義でな」
「ですね、独裁に弾圧に言論統制」
「秘密警察がありましたし」
ゲシュタポである、彼等の悪名はドイツでは最早伝説にさえなっている。
「ユダヤ人を虐殺しました」
「ロマニもスラブ人もでしたね」
「障害者や同性愛者にもそうしていましたし」
「恐ろしい連中でしたね」
「もう一度あんな連中が出て来たらな」
それこそとだ、シュターゼンはその黒に近いよくセットしたダークブラウンの髪とグレーの瞳があるドイツ系特有の彫のある白い顔で言った、細面であり背は一八〇程だ。痩せてすっきりした身体は駅員の制服によく似合っている。
「とんでもないぞ」
「ですね、だから極端な民族主義や排外主義はですね」
「危険ですね」
「昔はネオナチって言われてましたね」
「実際にナチスの信奉者もいますし」
「ハーケンクロイツを持っていたり」
「ハーケンクロイツは大嫌いだ」
シュターゼン
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