第一章
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来客
そのバッティングと走塁をけなす者はいない、しかしその人格を褒める者もいない。
タイ=カップはそうした男だった、とかく評判の悪い男だった。
それでデトロイト=タイガース、彼の所属しているチームのファン達からも言われていた。
「何であいつがいるんだ」
「俺あいつ大嫌いだよ」
「俺もだよ」
「あんな酷い奴いないぞ」
「ラフプレイはするしな」
「すぐに悪態はつくしな」
「暴力は振るうしな」
彼等hが口々に言っていた。
「しかもレイシストだ」
「そっちも嫌だな」
「俺はクラン反対だぜ」
「俺もだよ」
主に人種差別に否定的な者達が言っていた、当時のアメリカは人種差別が強かったがそれに反対する者も多かったのだ。その彼等が特にだったのだ。
「あんな奴タイガースから出せ」
「球界から永久追放にしろよ」
「問題あり過ぎだろ」
「野球人として最低だ」
「スポーツマンじゃないだろ」
「とにかくあいつは酷い」
「酷過ぎるぞ」
ぞの人格を否定されていた、そしてカップ自身こう言われても悪態をつきはするが性格や行動をあらためることはなかった。
だがある日のことだ、彼はふらりとだった。
ある店に行こうとした、それを見たチームの職員の一人が彼に言った。
「おい、その店は」
「ああ、あれだな」
「ジョーの店じゃないか」
「今からそこに行くんだよ」
「いいのかい?」
職員はカップに怪訝な顔で言った、如何にも獰猛そうなその顔に。
「あいつの店に行って」
「行ったら俺がどうにかなるのか?」
「いや、それはないが」
「精々何か言われるだけだな」
彼の店に行ったとだ。
「それだけだな、だったらな」
「行ってもか」
「別にいいだろ、言われることなんてな」
居直った様な堂々とした笑みでだ、カップは職員に言った。
「俺にとってはいつもだからな」
「それでか」
「言われることなら平気さ、じゃあ今からな」
「あいつの店に行くんだな」
「そうするな」
こう言ってだ、カップは職員を置いて一人でその店に入った、その店はごく普通のバーだった。だがそのバーのカウンターの中にだ。
一人の面長の男がいた、端正な顔だが何処か強い陰がある。その彼が今は静かな店にカップが入ったのを見て眉を曇らせたが気付かないふりをしていた。その彼に対してカップの方からカウンターに座って言ってきた。
「ジョー、俺だ」
「御前か」
その男ジョー=ジャクソンがカップに応えた。この男はかつてはカップと争う位のアベレージヒッターだったがある事件に関わったとして球界を永久追放となっていた、それで今はここでバーを開いて暮らしていたのだ。
その店にカップが来てだ、ジャクソンは彼に言ったのだった。
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