最善にして最高の策
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吹き飛ばした後、俺が能力で爆発と爆風を何とかするのでペルさんは安心してください』
何とかする?、一体どうやって?
それは自身の身の安全は含まれていたのか?
まさか今の彼には自身とペルの二人を守る力も残っていなかったのではないか?
今までの彼なら身に迫る脅威は全て防御していたはずだ。
クロコダイルと相対したあの地下室然り
宮殿での二度目のクロコダイルとの衝突然り
だが、今、この瞬間だけは彼はそうしなかった。
そこで気付くべきだったのだ。
形容し難い程のこの違和感の正体に
『これが現状、考えられる最善にして最高の策です』
最善に最高の策?
まさかそれは私とペルの身の安全が確保されていることが前提の策ではないのか?
アキトの能力なら万が一にも生存する可能性はあるだろう。
何故ならペルの能力は防御に適した能力ではないのだから
ペルがあの超重量の爆弾を上空まで運び、その後はアキトが対処する。
成程、確かにこの策は単純明快かつ効率的、最善にして最高の策だ。
だが、それはアキト自身の身の安全が保障してあればの話であるが
瞳から流れる涙が止まらない。
声は枯れ、何度も咳き込む。
視界は曇り、真面に上空さえも見上げることも出来ない。
緊迫とした状況でも、ビビは今なお上空に浮遊し、宙にて佇むアキトが此方を見据えた気がした。
錯覚かもしれない。
しかし、それでも……
彼の真紅の瞳が自分を見据えた気がしたのだ。
口元に笑みを浮かべ、静かに此方を見下ろす彼を
途端、アラバスタ王国の全土を眩いまでの極光が照らし出す。
その光はこの場の全てを震撼させ、振動させる。
ビビは必死に前方へと手を宙に佇むアキトへと伸ばす。
今なお、本人はその場から動こうとしない。
しかし、アキトには回避する時間すら存在しなかった。
ペルを宙からこの時計台まで投げ落とした時には秒針は既にゼロに達していたのだ。
アキトは左手で顔を覆い、目を細め、来たるべく爆発と向かい合う。
「アキトさん!」
ビビの絶叫虚しく、アラバスタ王国を滅ぼしうる爆弾がアキトを包み込み、次の瞬間には大爆発を引き起こす。
天を裂き、爆風を巻き起こし、光の極光とも呼ぶべき爆発が止んだころには何も残らない。
空を覆う雲も、爆弾の姿も、鳥も、アキトの姿も
全てが消えていた。
弱々し気な様子で崩れ落ち、ビビは泣き叫ぶ。
時を同じくして時計台の傍で成り行きを見据えていたナミも泣き崩れていた。
▽▲▽▲
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