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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン91 遊野清明と河風現
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ものだ。確定した敗北を前に、むしろ心が落ち着いてくるのを感じていた。先ほどの失敗のせいでいまだに酷い気分なことは変わりないが、それでも穏やかな気持ちがじんわりと心中に広がってくる。

「地縛神、壊獣、それに……ううん、カードの精霊だけじゃないか。人間だって、それ以外だってそう。清明にはそうやっていつだって誰かを惹きつけて、一緒にいたくなる魅力があるね」

 バトルフェイズに入る、その前に。死闘には似つかわしくないほど不思議と穏やかで優しい声とともに、現がそっと微笑んだ。

「……そりゃどうも。なんか最近、同じことをよく言われるよ」

 何か企んでいる、だなんてことは思いもしなかった。彼女は気高い、真のデュエリストだ。だからこちらも空元気を振り絞り、素直な気持ちで答えることができた。口角を上げてちょっと笑いそう返すと、現もおかしそうにクスクス、と笑う。そしてまた、小さく続けた。

「そしてそれは、私も同じ」

 言葉に詰まる。こんな時に気の利いたセリフの1つでも返せれば、どんなによかっただろう。その沈黙をよく聞こえなかったと解釈したらしく、またしてもからかうように小さく笑う。

「もう1回言うのは、さすがにちょっと恥ずかしいかな。ねえ、清明。清明がこの勝負に込めた覚悟。そしてその、デュエリストとして自分の限界を超えるほどの想い。デュエルを通じて私には、全部伝わって来たよ」

 ぶんぶんと強く、首を横に振る。伝わったからといって、それがなんの役に立つ。僕が求めていたことは、たとえそれが伝わらなかったとしてもいいから、とにかく結果を出すことだ。そんなこともできなかった僕に、優しい言葉をもらう資格はない。

「こんなこと言うと、清明は嫌がるかもしれないけど。ありがとう、清明。こんなに本気で、私と戦ってくれて。こんなにワクワクするデュエルを、最後に私としてくれて。最高のプレゼントだったよ」

 何を言わんとしているのか、その真意は掴めない。だけど、なぜだか嫌な予感が頭の片隅をよぎった。もう攻撃さえすればそれでこのデュエルは終わり、新たにカードを使う理由はない。それなのに彼女の手が最後の手札1枚、このドローで引いたそれへと伸びていく。

「何を……?」
「私には、清明の気持ちには応えられない。だから、清明はもっと生きて。そうすればそのうちきっと、私なんかよりずっといい子だって見つけられるはずだから。でもやっぱり、ちょっとだけ妬けちゃうけどね」
『まさか……』
「駄目だ!」

 嫌な予感が、ますます大きく強くなる。現が何をしようとしているのか、それを止めるためにデュエル中だということも忘れて駆け寄ろうとする。
 でもその時にはもう、何もかもが手遅れだった。

「魔法カード、未来への思いを発動。私の墓地から異なるレ
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