第一章
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仕事の時に見るもの
タナトスは死神だ、死神の仕事は言うまでもなく死んだ者を冥界に送り届けることだ。
タナトスはこの仕事に誇りを持っている、それで冥界の主神であるハーデスにもいつもこう言っていた。
「いい仕事です」
「そう言うのか」
「はい」
ハーデスにも胸を張って言うのだった。
「まことに」
「そう言うか、しかしな」
「私の仕事はですか」
「私が言うのも何だが」
ハーデスは自分の玉座からタナトスに言った。
「辛い仕事だ」
「そうは思いません」
「何故そう言える」
「見ているからです」
「見ているのか」
「人を」
タナトスはハーデスにはっきりと言った。
「ですから」
「人をか」
「そうです、では今日もです」
「死ぬ者の魂を連れて来るか」
「そうしてきます」
こう言ってだ、タナトスは右肩に大鎌を担いでロリータファッションに身を包んでそうして仕事に向かった。そうして。
死んだ者の魂を冥界に連れて行く、その時にだ。
彼女は従者にだ、こう言った。
「いつも思うけれど」
「はい、死ぬ時の姿ですね」
「人が死ぬ時の周りの人達の姿」
「その姿がですね」
「いいと思うわ」
こう言うのだった。
「その人を見送る姿がね」
「何ていうか色々ですね」
従者はタナトスのすぐ後ろから応えた。
「悲しんでいたり冥福を祈っていたり」
「喜んでいたりな」
「死んで喜ばれる人もいますね」
「そうよね」
「ええ、それは大抵どうしようもない悪人ですね」
「悪人が死ねば喜ばれて」
タナトスはさらに話した。
「善人が死ねばね」
「悲しまれますね」
「その時の人の姿がね」
まさにというのだ。
「素晴らしいのよ」
「だからですか」
「私はその姿を見ることが好きなのよ」
「人間が死ぬ時の姿を」
「その周りの人達をね」
「だからこの仕事が好きですか」
「ええ、そこには劇があるわ」
タナトスは従者にこうも言った。
「人間のね」
「劇ですか」
「人間は劇を作るわね」
「喜劇も悲劇も」
「あれはまさしく人間の姿なのよ」
「そして人が死ぬ時もまた」
「劇が行われる、その劇を常に観られることは」
それはというと。
「私に与えられた至福の喜びなのよ」
「悲劇も喜劇もですね」
「ええ、善人でも大往生なら」
そうした死に方ならと言うのだった。
「周りの人達は笑顔で見送っているわね」
「はい、実に」
「それを観るのも喜びだしね」
「喜びは色々ですね」
「人間が死んだ時にはね、そして死者自体を送ることも」
彼女の仕事それ自体もというのだ。
「好きよ」
「その時の人の姿もそれぞれですよね」
「そうでしょ、笑顔でついて来る人
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