第一章
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天才と呼ばれなくても
篠生瑞樹は何をやらしてもソツなくこなせる、このことで万能タイプとよく言われている。しかし。
彼自身は笑っていつもこう言っていた。
「僕何でも一番になったことはないんだ」
「勉強でもスポーツでも芸術でも遊びでもか」
「何でもか」
「うん、二番にはなっても」
それでもというのだ。
「一番はないんだよね」
「じゃあ天才じゃないのか?」
「一番になったことがないっていうのは」
「そうなんだな」
「うん、神とか天才とか言われたことは」
こうしたことはというのだ。
「本当にないんだ」
「そういう奴も珍しいな」
「人間絶対に何かの能力で天才っていうけれどな」
「じゃあ御前はソツなくこなす天才か?」
「そうなるのか?」
「そうかもね、何か本当にね」
実際にというのだ。
「僕は一度も一番になったことがなくてね」
「二番ばかりか」
「一番にはなったことがないんだな」
「神とか天才とか呼ばれたことはないか」
「うん、例えばモーツァルトみたいなね」
あまりにも有名な音楽家だ、その作曲した曲に駄作は一作もなく歌劇の登場人物に端役はないと言われている。
「何かにそうした才能はないんだよ」
「まあモーツァルトは極端か?」
「あそこまでいくとな」
「冗談抜きで作曲特化だからな」
「そこに全振りの」
「あと霍去病とかアインシュタインとかでもないし」
軍事や科学の天才達とも違うというのだ。
「あらゆる方面で天才だったレオナルド=ダ=ヴィンチとか」
「そうした人でもないか」
「そう言うんだな」
「何かの能力で天才とか神とか言われたことはないよ」
それこそ一度もというのだ。
「僕はそんな人間なんだ、けれどね」
「御前はそれでもいいんだな」
「器用貧乏でも」
「それで困ったことはないし何でもソツなくこなせたら」
それならとだ、瑞樹は微笑んで言うのだった。
「それでいいよ」
「そういうものか」
「勉強でもスポーツでも芸術でも遊びでもか」
「ソツなくこなせたらいい」
「そうなんだな」
「うん、それで満足だよ」
実際にそれで満足している瑞樹だった、それで彼は日々を彼なりに楽しく過ごしていた。だがある日のことだ。
インターネットの動画をスマホで観てだ、瑞樹は友人達に対して心からほっとした顔になってこんなことを言った。
「僕天才とか神じゃなくてよかったよ」
「いや、それいつも言ってるだろ」
「それで何で急に言い出したんだよ」
「何だ?スマホで動画観てるな」
「何の動画だよ」
「これだよ」
瑞樹は便利屋の仕事の中で知り合った、友人達にその動画を見せた、便利屋はよく言えば万能悪く言えば器用貧乏な彼にとって天職で仕事が止まる
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