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綾波さんは語りたい
第壱話:綾波さんは揉まれたい
第壱話:綾波さんは揉まれたい(起)
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、」

 揶揄う様なベルファストの言葉に、ケイトは少し非難がましく言う。彼女は有能で忠実なメイドであるが、主人であるケイトのことを困らせて楽しむ悪癖がある。そんな彼女の悪戯には慣れたものだが、今回のように他人を巻き込んだものは初めてであり、それはあまりよろしいことではない、と思えたのだ。

「確かに悪戯半分ではありますが、もう半分は御主人様の覚悟を促すつもりで行いました」

 ベルファストはそう言ってケイトを見つめてくる。その瞳の奥に真剣な光が見えて、ケイトは黙って彼女の言葉を待つ。

「御主人様はいつかはお嬢様の想いに答えを出さなければなりません。それがどんな形になろうと。そして、その時はそう遠くはありませんよ?」

「言われなくても分かってるよ、そんなことは」

 ケイトはため息をついてベルファストに答える。彼女に言われるまでもなく、ケイトは綾波の想いには気が付いているし、答えも準備している。後は機会だけだ、と思っている。そう、後は機会だけなのだ。

「そうですか。ならば、私から申し上げることはこれ以上はございません」

 そう言って彼女はどこからともなく、淹れたてのコーヒーの入ったカップを取り出し、ケイトの手前の机に置く。ご丁寧にソーサーまで付けてだ。

「ですが。このベルファストのことも、今後とも愛してくださると嬉しいです」

「分かっているよ」

 ベルファストの言葉をおざなりに返し、ケイトはコーヒーに口をつける。それは地獄のように熱く、悪魔のように黒く、天使のように純で、彼女たちの想いのように甘かった。
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