第2章 項羽と劉邦、あと田忠 〜虞兮虞兮、奈若何〜
第3話 憂国少女、章邯との出会い
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人、田忠であった。袈裟に三度笠、手には身の丈を超える錫杖を手にしている。
輝く銀髪にルビーの右目とサファイアの左目をもつ少年――伝え聞く姿通りだった。
仰天して這いつくばろうとする章邯を田忠は押しとどめ、再度末席に加えて欲しいという。
恐縮しつつも章邯はもちろん快諾した。
「聞け!! 哀れな囚人たちよ! 我が祖国秦の都に反乱軍が迫っておる! このままでは、秦は滅びるだろう!
そして、お前達の娘や妻は犯され、男は殺されよう! 家は焼かれ財産は奪われるだろう!!
お前達は、その罪により陵墓が完成した暁には処刑される運命だった!!
だがしかし! 慈悲深い皇帝陛下のお許しにより、お前達の罪は許される!
反乱軍を倒して、秦の天下をとれば、お前たちは自由の身となろう!!
私と共に来るか? ここで死ぬか? 二つに一つだ! さあどうする!!」
20万人の囚人たちの前で、章邯は威風堂々と演説した。本当は内心緊張で震えていたが、億尾にも出さない。
その様子をじっと見守る田忠は、舌を巻いていた。まだ秦も捨てたものじゃない。お姫様の国を愛してくれる人がいる。それがどうしようもなく嬉しかった。
その田忠に向かって章邯は振り返る。
「ここには偉大なる仙人、田忠殿も居られる!! 始皇帝陛下の元より救国のため遣わされたのだ! この戦い我々の勝利は約束されたも同然だぞ!!」
章邯の突然の無茶振りに驚きながらも田忠は、前へと進みでる。そして、章邯に負けぬ名演説を披露した。
「私には夢がある! それは、いつの日か、この国の国民が立ち上がり、この国の信条を真の意味で実現させるという夢である。
私には夢がある! それは、いつの日か、咸陽で、かつての囚人の息子たちとかつての支配者の息子たちが、兄弟として同じ食卓につくという夢である。
私には夢がある! それは、いつの日か、不正と抑圧の炎熱で焼けつかんばかりの楚でさえ、自由と正義の楽園に変身するという夢である。
私には夢がある! それは、いつの日か、私たちの子どもたちが、出身地によってではなく、人格そのものによって評価される国に住むという夢である。
これがわれわれの希望である! この信念を抱いて、私は、我々は! 戦地へ向かい戦うのだ!!」
大歓声の中、章邯は感動していた。憂国の感情に任せて、趙高に命を賭けた直談判をしたが、内心びくびくしっぱなしだった。
そこへ突然現れた心強い援軍。本当なら田忠が上に立つべきだが、皇帝も趙高も認めないだろう。
見た目は線の細い美少年である。だが、泰然自若とした姿は、傍にいるだけで、勇気が泉のように湧いて出るかのようだった。
(なんとしてでも、祖国を救って見せる!)
こうして
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