セランVSライナ 前編
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「マクワイルド中尉はどう思う」
全艦隊が一丸となって進む様子を見ていたヤンが尋ねた。
「十分考えていると思いますよ、学生にしては」
「学生にしては、ね」
ヤンは薄く笑った。
アッテンボローが眉をひそめてヤンを見つめる。
疑問の表情。
それを受けて、ヤンは小さく肩をすくめた。
「結果論から言えば、今のままで十分だけれど。欲を言えば、発見された場合のことを考えてもらいたかった。今の状態だと、もし何らかの理由があって、敵が斜線にいた場合に大変なことになる」
「移動に全力を向けている状態で、遭遇した場合戦闘態勢に移行するのに数十分はかかりますからね」
「作戦の継続は難しいだろうね。マクワイルド中尉なら、どうする?」
試すような視線に、アレスは頬をかいた。
睨むような視線がスクリーンをとらえている。
「私なら固まらず、四学年を先頭に、遅れて他の艦隊を動かします。敵に発見された場合は、四学年が防ぐ間に、後方で戦闘陣形を整えるか、あるいは第二目標を目指します。四学年は少し大変ですけれど。で、ヤン少佐はいかがですか」
「そうだね。私だったら、二学年を先頭にして、一部にまた偽装艦を使うかな。一度派手にやっているから、相手が騙されてくれたら儲けものだし、仮に攻撃を受けても被害は少数ですむだろうしね」
「でも、攻撃力に劣るのでは。賭けに出た意味がなくなりますよ」
「それでも時間的にすれば、後方に本陣があるわけだから敵への打撃力はそれほどかわらないと思う。それよりむしろ被害を受けた場合に、次の作戦行動に支障を来すほうが怖いよ」
隣で進む会話にアッテンボローがワイドボーンを見る。
助けを求めるような視線だ。
つまり、この二人は何を言っているのだと。
「何だ、貴様は。俺を試しているのか」
「ああ、いや、決して、恐ろしいことをしようと思ったわけだはないのですけどね」
「ふん。これに答えがあるわけではないだろう。アレスは成功した場合に短時間で最大の効果を与えることを目的に、ヤンの案は失敗した場合に被害を最小限に抑えることを目的に戦術を立てている。あとは好みの問題だ」
「何か、俺が異動したくなってきましたよ」
まじかこの二人はと、学生を卒業して二年。
いまだ二十二の若者は嘆くように頭を抱えた。
+ + +
赤の艦隊が無人の荒野を行く。
彼らの先輩にとっては厳しい言葉を受けたかもしれないが、それでも学生たちにとっては驚くべき光景であろう。
全艦隊が一段となって、防衛施設を目指すのだ。
少なくとも右前方の防衛施設は破壊された。
誰もがそう思っていた。
索敵艦を出していたセラン艦隊が慌てたように動き始める。
前方四学年の艦隊が右に、同時に他の艦隊も追従するように
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