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いたくないっ!
第十二章 魔法女子ほのか最終回 そして
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、上体を起こして前足二本を高く振り上げた。

 ほのかは、表情一つ変えることなく、自らすっと一歩踏み込んだ。立ち上がったことであらわになったマーカイ獣の腹部に、ぱしり払いのけるように手の甲を打ち付けていた。

 ただそれだけに見えたというのに、一体どれだけの威力がその打撃に込められていたのか。
 マーカイ獣ヒヒンマは、悲鳴を上げる余裕すらなく地に叩き付けられており、叩き付けられたその瞬間には、既に身体が完全に潰れてのし紙のようにぺちゃんこになっていた。そして、砂になって消えた。

 ほのかは、そんなことよりも、と首を軽く振って、左右を小さく見回した。

 サーガイトと、はるかの姿が、消えていた。

 風に乗って、声が聞こえてきた。息も絶え絶えといった、女性の声が。

「バカな、やつ、だ。いまのが、あたし、を、倒す、最後の、チャンス、だった、のに。今日は油断しただけ。次は、遊ばず、最初から全力で、一撃で、一瞬で、殺してやるよ。魔法女子……ほのかあ!」

 絞り出すような狂った笑い声。それがだんだんと小さくなって、風の音に消えた。

 ほのかは空を見上げ、ぎゅ、と拳を握った。
 その顔に浮かんでいるのは、不安よりは、寂しさであっただろうか。

 そっと顔を下ろすと、その表情が変化した。悲しそうであることに変わりはないが、質、ベクトル、といったものが明らかに異なっていた。
 ほのかの視線の先には、

 あおい、
 しずか、
 ひかり、

 青、緑、黄、三人の魔法女子が、うつ伏せに倒れている。

 ほのかは、ためらうような小さな足取りで、ゆっくりと近寄っていく。

 三人は、ぴくりとも動かない。
 彼女たちはみな、地に頬をつけ、まるで眠っているかのように、すべてをやりきった満足げな表情で横たわっていた。

 ほのかは、悔しそうな、寂しそうな、苦い表情で唇を噛んだ。
 ぎゅっと拳を握った。

「私なんかを、助けるために……」

 瞳が潤んだかと思うと、一条の涙が、頬を伝い落ちていた。
 うくっ、としゃくりあげると、もう感情を抑えることが出来ず、立ったまま、両の拳を握ってわんわんと泣き続けた。
 空を見上げ、涙をぼろぼろとこぼし続けた。
 どれだけ、続いた頃だろうか。

 くく、
 という声に、
 ほのかの肩が、ぴくり震えた。

 顔を落とし、泣きはらした真っ赤な目で、きょろきょろ見回した。
 震えたのは……震えているのは、ほのかの肩だけではなかった。うつ伏せに倒れている、あおいの青い魔道着が、全身が、細かく震えていた。
 細かい震えは、すぐにぶるぶると大きなものになった。

「ええっ!」

 ほのかが驚きに目を見開いた、その瞬間であった。

「わはははははは
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